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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 81

中心に、扉から奥へと向かう緋毛氈が長く敷かれていた。

最奥部にいたって、リオンはようやく檻から出された。
バルディッシュを手にしたままのノエミに、拝跪の姿勢を強要される。

壇上に首長の玉座があった。

玉座には一人の女が、けだるげに肘かけにもたれていた。
鮮やかな扇を手に、胸元の開いた、白っぽいドレスを纏っている。
簡素に見えるが、薄くまといつくような生地に繊細なひだが施されており、胸の下の高い位置で締めた帯や肩ひもは金細工や宝石で飾られていた。
肌が、蝋のようになめらかで青白い。
暗く燃え立つような赤毛の、一部を結い上げ、残りはゆるく波打ちながら、あらわな白い肩を飾り立てる。
小さな顔に、まなじりの切れ上がった大きな目と小ぶりの鼻、紅を刷いた唇がバランスよく配置されている。
唇が少し薄めで酷薄な印象を与えたが、暗褐色の切れ長の目は、長い睫の下で誘うような妖気を持っていた。
美人だ。
好みかどうかは別として、リオンはそう判断した。
彼女は赤い唇を、物憂げに開いた。


「お前が下界から来たと申す男か」

鈴を転がすような、可憐な声音だった。
「おもてを上げよ」
彼が目をそらしたままでいると、ノエミがぐい、と彼の顎をつかんで前を向かせた。
ぱちり、と音を立てて、玉座の女が扇を閉じる。
そしておもむろに立ち上がると壇を降り、そのまま、リオンの前に立つ。
「あまり近くに寄られましては、危のうございます」
「かまわぬ。お前がひかえておるのに、何を恐れることがある」
女は、止めようとするノエミを手を振って制すると、ずい、とリオンに顔を近づけた。
ほのかに、鈴蘭の香りがした。
「わしの名はミュゲ。我が『峰』の一族、第四十二代の長である」
静かに、事実を語る口調で、彼女はそう宣言した。
リオンの返答を、その宣言は必要としていなかった。一氏族の長の名乗りだ。声音は愛らしく甘いが、その持つ響きは堂々たるものだった。
彼は眉を寄せた。以前にも、こんな声音をした人物がいたことを思い出したのだ。声質自体は威厳とは無縁なのに、その人物がしゃべりだすと、誰しも注目せずにはいられなかった。
どんな集団でも、長となるとこういうしゃべり方になるのだろうか?

ミュゲは、まじまじとリオンの顔を注視した。
「あの水鏡では、微細にはわからぬゆえ、こうして呼んでみたのじゃが…」
玉座の脇に置かれた水盤をちらりと見る。
「なるほど。近くで見ればいっそうかわいらしいこと」

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