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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 49

私は呆れて、完全にそちらを振り返ってしまった。
その一瞬に、ガシャ、と前方の女の甲冑が鳴った。
「っ!」
鎧姿で跳躍し、大上段に斧を振りかぶった女が目の端に映る。
私は反射神経だけで、大剣を引き上げた。

ガキン、と重い金属音が一帯に響き渡った。
強烈な一撃に、がく、と膝が折れた。衝撃で腕がしびれる。
手加減なしの、必殺の一閃だった。油断している場合ではない。私は目の前の女に、完全に意識を切り替えた。
女は長く組み合ってなどいなかった。
渾身の力で押し戻す私の剣からあっさりと刃を退くと、縦にギュル、と柄を回転させ柄で懐を突いてくる。
「く、」
ぎりぎりで身体をそらし、横にかわす。尖った柄頭が脇腹をかすめた。
ブン、と音を立てて、女が柄を横に払う。私はそれを、剣を地に突き立ててガチ、と受け止めた。金属音。槍柄も金属製なのだ…その総重量を想像して、戦慄を覚える。
女は止められたと見るやすかさず槍を引き、流れるようなムダのない動作で手を持ちかえて、ぐるりと回した。槍を背中に通し、今度は逆方向から斧刃の方で薙ぎ払う。
私は今度こそ、後ろに跳んで逃げた。
槍柄による牽制ならともかく、斧の渾身の薙ぎ払いを受ける自信がなかった。
変わりに、大振りを外した隙を狙って突きを叩きこむ。…叩きこもうとした。
だがその速さを見誤った。
空振りした斧は、一旦空に放たれたが、そのまま流線を描いて帰ってきた。降下に伴って速度を増している。私はとっさにぐいと突きを引き戻し、何とかそれを受けた。
が、先刻の腕の痺れがとれておらず、体勢も万全ではなかった。弾くことも受け流すこともできず、受けた剣ごと、踏ん張った足元が地を滑る。
そのまま倒される寸前に、私は自ら横に跳んだ。
女は追ってきた。縦横に、あるいは上下に、回転を交えて自在に斧を振るい、襲いかかってくる。

私はそれを何とかかわし、弾きながら後退し続けた。
幾度かは、目に映らない斬撃もあった。背に冷たいものが流れ落ちる。

非常識なスピードだ。
バルディッシュは本来、思い切り振り下ろして重量で叩き斬る武器であって、ただの剣や槍のように軽々操るものではない。私の大剣も同様だ。
最近は複数の弱者相手がほとんどで、攻撃も防御もすっかり大味になってしまっていた。
だが、反省は後でもできる。
問題は、撃ち合った瞬間にも分かった事実。
女は私より強いのだ。

ガッ、と真正面から刃が噛み合った。ぎりぎりと圧し合う。
一瞬、撃ち合いが止まった。
相手の攻めに対応していくだけの、余裕のない攻防に、好転の兆しがうっすらと浮かんだ。

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