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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 111

まじめな答えが返ってくるとは思わなかった。
彼らしくもない物言いに、私は首をかしげた。
「そんなことも、あるのかな」
「さあ。よくは知りません」
リオンは静かにそう答えた。
私はそれ以上訊かず、ぐいと手の甲で目元を拭った。動くのに支障はないようだ。そのまま身を起こす。
リオンが手を貸そうとするのを、断ろうとしてふと気付いた。
「…リオンは」
顔を上げると、彼もこちらを見る。
「どこもケガはないのか?」
「俺?」
リオンはあきれたように聞き返した。
「俺は何もないですよ。あれに呑み込まれたのはあんたたちの方。人の心配してる場合じゃない」
嘘ではないようだった。彼はやせ我慢をするタイプでもない。
「二日、寝てたんですよ。レネーの奴はまだ起きないけど。あんたが起きたってことは、そいつももうすぐでしょ」
示された隣のベッドに、少年が眠っていた。
血の気のない真っ白な顔色だが、呼吸はしているようだった。胸が規則的に上下する。
「医者は、二人とも異常ないって。…あの、クリス」
「何?」
「一応言っておきますけど!体洗って服着せたの、宿のメイドですから」
言われて初めて、自分の格好を見下ろした。
前で打ち合わせて腰帯を締める形の、綿の袷の寝間着を着せられていた。宿で貸し出しているものだ。泥やあの緑の網の痕跡は全くない。
泥の中でさえ異質な、あのべたつく粘液の感触を思い出し、私は身震いした。
「何だったんだあれは…」
喉の奥に、まとわりつくものが残っているような気がして、頸もとに手をやる。
そこで、黙ってこちらを見ているリオンに気付いた。
「リオン?何だ、その顔は」
リオンは不満そうに口をとがらせていた。
「なーんか最近…」
「最近?どうした?」
「最近、さわっても近づいても平気な顔してる」
何を言い出すかと思えば、リオンは意味のわからないことをぼそりとつぶやいた。
「何の話だ」
「いや、別にいいんですけどね。おもしろくないっていうか何ていうか。前はもっとこう…」
私は顔をしかめた。
「何でお前をおもしろがらせにゃならんのだ。私はお前のおもちゃじゃないぞ」
「そりゃ、そうですけど。…まあいいや。何か食べたり飲んだりします?持ってきてもらいましょうか」
リオンはあっさりと話題を切り替えた。
食欲はなかったが、彼の言葉によれば、二日間何も口にしていない。無理にでも胃に入れておくべきだろう。
「そうだな、頼む」
「やらかいものがいいんですよね。注文して来ます」
彼は食堂になっている一階に降りていった。



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