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群れなして蠢く美しき屍
官能リレー小説 - ファンタジー系

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群れなして蠢く美しき屍 30

まるで風船に空気を吹きいれたかのごとく、その身体が膨張を始めたのだ。
突然かつ急激な変化に耐えられなかったのだろう、皮膚が破けてそこから生々しい色をした肉があらわになる。
だがそれでも肉体の変化は止まらない。
胴体を中心に顔や手足も膨らみ・・・。
やがて人間の形をも失って1つの肉の塊と化していく。
それは大きさこそ違えど、職員室で宮崎(仮)たちが出てきた、あの肉の繭と同じものだった。
誠たちは期せずして、あの肉の繭ができる過程を目の当たりにしてしまったのだ。
ビクビクと時折思い出したかのように脈動を繰り返す男子生徒だったもの。
その光景は今まで押さえつけられていた誠たちの恐怖心に火をつけた。

「う・・・「キャアアアァァッ!?」・・・ッ!?」

誠が悲鳴を上げるより早く、弥生と美樹が悲鳴を上げる。
無理もない。こんなものを目の当たりにして悲鳴を上げるなと言うほうが無理だ。
女性特有の甲高い悲鳴が誠の耳を貫く。
しかしそのおかげで思考停止状態に陥っていた誠の頭脳が再起動を始めた。
起動したての脳みそをフル回転させてとった行動。
それは悲鳴を上げる仲間たちと共に、わき目もふらずに逃げることだった。

「何なの!?ねえ河原クン、今の何なのよぉっ!?」
「う・・・う・・・!」

あまりに衝撃的な光景にみんなパニックに陥っていた。
美樹はボロボロと大粒の涙を流しながら誠に質問を繰り返し。
うまくしゃべれない宮崎(仮)も誠に助けを求めるようにすがりつきながら、何かを口にしようとしている。
弥生・白髪・黒髪に至っては言葉にすることすらできず、泣きじゃくったり今見たことを忘れようと必死に頭を振っていたりしていた。

「うるさい、黙れっ!あんなもん、オレにわかるわけないだろっ!?
 とにかく車に乗ってここから離れるんだよっ!」

泣きじゃくる美樹の質問に、誠は怒鳴りつけるようにそう答えた。
そう答えることしかできなかった。それも無理のない話である。
これまで誠たちが遭遇してきた危険は、どれも人間として死ぬことのできるものばかりだった。
だが風船のように膨れた人間。あれだけは違う。
あんなもの、人間のできる死に方ではない。
人間のすべき死に方ではない。
だからこそ誠たちはいまだかつてない恐怖におびえ、逃げているのだ。
おかしくなった女子生徒や女教師のことも忘れ、誠たちは職員駐車場へ急いだ。
車はすぐに見つかった。
誠たちは逃げるように車に乗り込む。
弥生の車は乗用車で、6人が乗り込むにはちょっと窮屈だったがここから逃げることに比べれば大した問題ではない。

「みんな、乗ったか!?先生、早く出して!」
「は、はいっ!」

誠の指示に弾かれるように飛び出す車。
ふと気になって校舎のほうに目を向けると。
誠たちの出てきた昇降口に全裸・半裸の女子生徒・女教師がたむろしていた。
どうやら先ほどの悲鳴を聞きつけてきたらしい。
その中の何人かは誠たちの車に気づいて走り出しているが、人間と車では勝負は目に見えている。
もう襲われる心配はないだろう。
だが誠たちの顔はどれも晴れやかなものではない。
彼らは知ってしまったのだ。
今までの日常が終わってしまったこと。
そして自分たちの身体にいつ起こるかもしれない不気味な因子が、今もなお息づいているということを。
それでも彼らは前に進み続ける。
最後まで人間として生きるために。
校門を抜け、ようやく学校から脱出した誠たちに飛び込んできたのは、ところどころで火災が起き始めた住宅地と男の悲鳴。そして女の喘ぎ声。
植木や壁が邪魔してよく見えないが、おそらくおかしくなった女の人たちが家族を襲っているんだろう。
誠はそれらを無視して車を運転する弥生に指示を飛ばす。

「先生!早く広い通りに出てください!ここじゃ何かあったとき身動きできなくなる!」
「は、はいっ!」

肉塊に変わった男子生徒の恐怖をいまだにぬぐえぬ弥生は、誠に言われるがままに狭い通りを抜けて大きな通りへと移動する。
そしてそこには新たなる恐怖と絶望が誠たちを待ち受けていた。

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