群れなして蠢く美しき屍 12
「河原だ。救援が来るなら、それもいいかもしれないけどな。
町はごらんのとおりの有様だし、電話は連絡してもぜんぜんつながらない。
救援を出せねえのか、出さねえのかわからねえけど、救援はまず来ないと思ったほうがいい。
来ない救援をここで待ってもしょうがねえからな。
問題なのは、ここから出るにはまた校舎に戻らなきゃならねえってことだ。
オレは運よくここまで逃げられて、先生たちも運よく正気に戻れた(?)けど・・・。
今度もそううまく行くとは限らねえからな」
「・・・!確かにそれは大変ね!」
「うんっ!河原くんがいなくなったら、もうHできないものっ!」
誠の言葉に最悪の光景を想像した2人が、真剣な表情になってつぶやいた。
もっとも、2人のそれは誠の考えるものとは大きな隔たりがあったようだが。
まぁ協力してくれるのなら、とやかく言うまい。
誠はそう割り切ることにした。
「よし、それじゃあ早く行こう。
今、おかしくなってる連中は捕まえた相手とのセック○で夢中になってるはずだ。
この機会を逃したら、ここから出られなくなる」
こうして3人は、魔窟と化した校舎に再び戻ることとなった。
そこで3人は知ることになる。
屋上に来るまでの騒ぎは、これから起こる異常事態のほんの序章・・・始まりに過ぎなかったということ。
そしてそれは自分たちの身体の中でも起こりつつあるということを。
「それじゃあ・・・行くぞっ!」
そして。魔窟への入り口が、再び開け放たれた。
ガチャッ・・・!
「うっ!?」
「キャッ!?」
「ふあぁんっ・・・♪」
扉を開けた3人を最初に襲ったのは、ものすごく濃密な性臭だった。
おそらく誠たちが扉を開ける今の今まで、お楽しみに明け暮れていたのだろう。
階段の先からは、男とも女ともつかない小さなうめき声がいくつも聞こえてくる。
まさに魔窟と呼ぶにふさわしい雰囲気だった。
だがまた屋上に戻ったところで何も始まらない。
意を決した誠は振り返ると、小声で弥生と美樹に注意を促す。
「ここから先は狂った連中に気づかれないよう、できる限り音を立てないように行きましょう。
もし道をふさいでいるようだったら、迂回して・・・って先生?挟山さん?」
「ふえっ!?あ、な・・・何っ!?」
「だ、大丈夫っ!先生、ちゃんと河原くんの話、聞いてたよっ!?」
おそらくこのニオイに陶酔していたのであろう。
この危険極まりない状況下で緊張の糸がブッたるんでる2人に、誠は無言で2人の頭をたたいた。