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月の騎士
官能リレー小説 - ファンタジー系

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月の騎士 20

「予想以上のお母さんだったわね…」
「私より年下かと思いました…厳しい方って聞いていましたし…」
天真爛漫なラムドの母親を見ながら、イラースとユールはヒソヒソと話している。
「あ、ごめんなさぁい。ワタシ、エスティですぅ。ラムド君がお世話になっております。フーフー…」
深々と頭を下げて、紅茶に何度も息を吹きかけて冷ましていた。恐る恐るカップに口をつけるが、結局熱いのかテーブルに戻した。
「ラムド君たらぁ、こんな可愛いガールフレンドが三人もいたなんて♪お母さんに教えてくれないんだからぁ。」
三人を見渡して、クッキーを一口かじった。
「はい!私が正妻!二人は側室です!」
「ちょっとイラースさん!違いますよお母様!アタシが正妻です!」
「待ってよ!私が本妻になるんです!」
「あららぁ〜、ラムド君モテモテなんだぁ♪」
どうしても母親に見えないエスティだったが、嬉しそうに温くなった紅茶を口に運ぶ。
「みんな、宿は〜?」
「これから借りようかなって。」
「王都って宿代高いんだよぉ?奥に道場があるから使わない〜?」
「是非!」
三人同時に返事をして、急いで荷物を取ってくると告げて家を飛び出した。
その頃、ラムドは目を覚ました。横でアルカが見つめている。
「アルカが治療してくれたのか。」
「うん。あとアリッサって子が。」
胸の傷は塞がっているものの、古傷のように跡が残っていた。
「ありがとう。」
「ラムド、ごめんね。私が強引に連れてきたから。」
「構わないよ。元々、足を運ぶつもりだった。」
「そっか…」
アルカが顔を伏せると、ラムドは立ち上がって身支度を始めた。
「動いて大丈夫?」
「あぁ、充分休んだ。」
「…」
最後に剣を携えて、ラムドは背中を向けた。
「明日、王城へ行く。それでいいだろ?」
「うん…」
「また明日。」
ドアが閉じると、アルカは呟いた。
「ラムド…好き…」
……

「ラムドくぅ〜ん!お帰りなさぁい♪」
三人と合流して自宅のドアを開けると、エスティが胸に飛び込んできた。
「今まで連絡もしないでごめんなさい。お母さん。」
抱き上げたエスティに頬擦りされているラムド。慣れている様子で奥へ運ぶ。
「普段からあんな親子関係なのね。」
「関係を疑いたくなっちゃうよ…」
「キスぐらいなら普通にしてそうです…」
降ろされたエスティは、パタパタと音を立ててキッチンへ走った。
「ラムド君の大好きなアップルパイ焼いたよ〜♪みんな手を洗っておいで〜♪」
「は〜い!」
三人が返事をすると、手洗い場へ向かった。
「お母さん。」
「ラムド君、負けちゃったんだってね…。でも大丈夫♪食べたら修行しよ♪」
「はい。」
テーブルを囲んでアップルパイを口に運ぶ面々。
「美味し〜!」
「いっぱい食べてね〜♪」エスティのお菓子と笑顔に和みながら、そろそろ道場へ、とラムドは席を立った。
「みんなも来るぅ〜?」

「は〜い!」
家の奥へ進むと、板張りの床の大部屋となっていた。三人は並んで座り、ラムドは木刀を手にする。
「お母さん。よろしくお願いします。」
深々とお辞儀をすると、エスティが木刀を握った。
「うむ。」
「え…?」
エスティの低い声を聞いて、三人が声を漏らした。先程までのほんわかした雰囲気が一変、鋭利な刃を首に向けられているような気配が漂う。
「っ!!」
エスティが消えたように見えた。ラムドだけが反応して、背後を振り返る。
鈍い音が響いて、ラムドは背中から壁に叩き付けられた。
「バカモノが!」
「くっ!」
エスティの怒声が飛ぶと、ラムドは床を蹴って飛んだ。
「ラムド!私が攻めるのを待てる程の剣士か貴様は!」
ラムドの両手の一撃を、エスティは片手で簡単に弾いた。
「愚か者が!」
後ろ回し蹴りを放たれて、腕で受けたラムドは吹き飛ばされて再び壁に叩き付けられる。
「さっきのお母様と本当に同一人物なの…?」
「と言うか強すぎでしょ。ラムド殿が全く歯が立たないなんて。」
「本当に厳しい方だったんですね…」
道場に木のぶつかる乾いた音が響く。肩で息をしているラムドに対して、エスティは顔色ひとつ変えずにいた。
「バカモノが!」
エスティの突きが肩を打ち抜いて、ラムドは倒れた。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「立て!」
檄を飛ばされて、ラムドは立ち上がる。
果敢に攻め掛かるも、ラムドの攻撃は届かない。打ちに行けば打たれて、バランスも取れずに何度も倒れる。
「何度死ぬ気だバカモノが!」
フラフラと立ち上がったラムドだったが、強烈な前蹴りで大の字に倒れたまま動けなくなった。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「いいか、セガイグは既に私より強い。私の息も乱せない今のお前が、アイツを越える事など不可能だ。」
そう言って、木刀の先をラムドに突き付けた。
「アギルダンに負けた場面を再現してやる。立て。」
木刀に身体を預けながら立ち上がると、ラムドは構えた。
「オーラで関知出来ない一撃だったな。」
「はぁ、はぁ、はい、」
木刀を横薙ぎに振るう。横で受けようとしたラムドの服を、すり抜けたエスティの木刀が破り裂いた。
「っ!!」
「わかったか?」
「い、いえ。」
「お前がオーラで察知したのは殺気の幻影だ。アギルダンめ、妙技を使う。」
エスティの説明では、アギルダンは殺気を操る。
闘気を張り巡らしたラムドは、薙ぎに構えたアギルダンの殺気を関知した。その時点で、既に無心の高速の刃は振られている。
それを受けたと思った時点で、アギルダンの刃は肉に食い込んでいた。

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