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おてんば姫、ファニーの冒険
官能リレー小説 - ファンタジー系

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おてんば姫、ファニーの冒険 34

ソレが生まれたのはここより遙か北の森だった。
人の言葉でハイイログマとよばれる種族の子供だったソレは親とはぐれたところを猟師に捕らえられ、サーカス小屋に売り飛ばされた。
サーカス小屋でソレは調教師にムチと、飢えに常に苦しめられていた。
そんなソレをサーカス小屋で唯一優しく接してくれたのは、同じようにサーカス小屋に売られてきた金髪の少女だった。
サーカスは興行を行いながら北から南へと、流れていった。
ソレが人の背丈ほど成長したとき、サーカスはメメール山脈の街道を通っている所を山賊に襲われた。
ソレが小屋から逃げ出したとき、少女は山賊に犯されていた。
ソレは山賊を叩き殺すと、少女を抱えて山へと逃げた。
山頂の洞窟にたどり着いた時には、少女は死に絶えていた。
本能は少女の死体を食べるべきだと主張したが、ソレは本能に逆らい、洞窟に生えていたボッキ茸を食べて飢えをしのいだ。
その後、ソレは山頂にやってくる男を殺し、女を犯した。
やがてソレはメメールのヌシとなった。
ここのところ、ソレには不満があった。
彼が根城とするこの山々に、さまざまな魔物が現れて我が物顔であちこちに拠点を築いているのだ。
ソレですら対峙すると緊張するような強力な奴から、取るに足らない有象無象まで数多く。
ソレにとって、獣人たちは敵ではなかった。彼らはソレが棲み付く以前からの山の民でもあり、ソレとは適度な距離を置いていた。山頂まで来るのはボッキ茸目当ての者か冒険者という2種類の人間だった。
だが魔物は違った。
魔物はソレ自体に興味を持ってやって来るのだ。
最初はゴブリンやオークなどの下級の魔物が、ソレの領域を荒らしにやってきた。
ソレは即座に連中を皆殺しにした。
次にオーガーやトロルなどの中級クラスがやってきたが、ソレは苦もせずに打ち倒した。
ソレの強さは魔王グリンデの軍勢の幹部にも伝わり、ソレを倒すのではなく、仲間にするための使者がやってくるようになった。
今日もソレが花畑で花の冠を作ってると、ソレは自分を見つめる視線を感じていた。
(マタヤツラカ・・・)
ねぐらにしている洞窟を出るときから気がついていたが、あえて気づかないふりをしていた。
ソレはかぎ爪を器用に操りながら、花の冠を作っていく。
花の冠作りは、まだソレが小熊だった頃、少女がソレのために作っていたのだ。
今ではソレが少女の骸に捧げるために作っている。
死体を弔うなど、ソレの所属している種族の本能にはない物だった。
すでにソレは熊という動物の概念からはずれたモノになっていた。
ボッキ茸の薬効と山の霊気により、ソレは動物から妖とよばれるものへと変わっていった。
身体能力も知能も、普通の熊の数十倍も優れていた。
齢もすでに百を超えており、とうに老いて亡くなっているはずが、ますます精力盛んとなっている。
ボッキ茸の影響か、常に発情していて、今も股間から巨大な男性器が屹立していて、時折先端から精液をとばしている。

さて、ソレが花の冠を作り終えたと同時に、木陰から一人のダークエルフが現れた。
ダークエルフはまるで散歩の途中で、近所の人に出会ったかのようにソレに挨拶をする。
「こんにちは、今日も良い天気ですね」
しかし、ソレは無表情に見返すだけだった。
別段ダークエルフの言葉が理解できないわけではない、だがこちらから挨拶も返す気もなかった。
「・・・今日こそはよい返事を聞かせて貰えるかと思いましたが、どうやら無駄足のようですね。また今度、お目にかかりましょう」
そう言い残して静かに去っていった。
ソレはしばらく警戒していたが、ダークエルフが本当に帰ったと分かると、洞窟へと帰った。
ソレが巣にしている大洞窟へ入ると、何頭もの熊たちが寄ってきた。ソレが過去に孕ませた雌熊たち、それにそうして生まれた多くの子孫たち。山の霊気を受けたソレの子供であり彼ら彼女らも霊気を受け、身体能力や知能はすでに熊を大いに凌駕していた。
魔物たちがこの山々に来たことによって生じた問題はこの家族のことでもある。
平たい話が家族の餌の確保を妨害され、また家族が襲われることもあったのだ。
今は仲間に迎えようとしてか家族に果てが伸びてこなくなったものの気は抜けない。人質(熊質?)にされる危険は今もあるのだ。

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