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おてんば姫、ファニーの冒険
官能リレー小説 - ファンタジー系

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おてんば姫、ファニーの冒険 283

ファニーは静かに頭を横に振る。
かつてのような気持ちは正直失われたし、今の状況ではお互いが受け入れられない。
それに自分にはもう人間の夫は無理だと言う思いがファニーにはあった。
中途半端に男を味わうと、性欲の抑えが効かなくなって伴侶を吸い殺すか夫以外の多くの男をベッドの中に招き入れなくてはならなくなる。
ベルゼビュートを夫にと考えてしまうのも、そんな問題からだった。
「今の私には、子供達を守り育てていく事が一番大事なのです」

エステルの子供達が支えと言うのはファニーにもよく分かる。
ファニーもそうだから・・・
今の答えが偽らざる心境である。
ヘンドリック王はそんな娘を複雑な心境で見る。
彼も人の親だ。
自分の幸せより子供の幸せを考える気持ちは彼も同じだ。
そして彼は王だ。
何よりモンデール臣民の為をと思うのが王の王たる所以である事も心得ている。
「そうか、それなら・・・」
ファニーの問題と、彼個人の問題を考えれば決断の時だ。
それにヘンドリック王は魔物との混血児がモンデール王位に就く事に抵抗は無い。

むしろ良い方向に行く気がするし、何より孫達が可愛くて仕方ない。
ファニーと孫達を見ていると、そんな気持ちが益々強くなっていた。
「それならば尚更、お前は王位に就くべきだろう。最初は強引に進めても、モンデール臣民を想う気持ちを強く持って政を行えば、必ず理解されるだろう。それが子供達を守る事になる・・・」
「お父様・・・」
王として譲位の決断は決して軽くない。
ヘンドリック王なりの苦悩も表情には見えたが、彼はすぐに表情を明るくしてこう言う。

「本音は楽隠居して孫と遊ばせて欲しいのだよ。再婚にしろ、隠居にしろ俺の我が侭みたいなものだ。流石に我が侭者に王は勤まらんだろう?」
冗談めかして言うヘンドリック王にファニーもつられて笑う。
最後は冗談めかしたが、ヘンドリック王のファニーとモンデールを同時に守ろうと言う気持ちはよく理解できた。
今のファニーには選択肢がそう多くないのだ。
人間の夫を迎えられないなら、ベルゼビュートの元に戻るか、王位を継いでしまうかのどちらかが子供達を守る為の術だろう。

後はモンデールを背負う覚悟があるかどうかだろう・・・
いや、ファニーがどうこうより、ファニーに関わる周囲の全てがその覚悟を求めている気がした。
「分かりましたお父様・・・」
ファニーが決意の言葉を口にする。
かつて、お転婆姫と呼ばれていた頃は考えもしなかった。
だが、今のファニーは身体は汚されようが、それを成し得るだけの器量と胆力が備わっているのも自分でも理解できていた。
「ファニーは、お父様から王位を譲り受け、モンデール王国に嫁ぎ、全てを臣民に捧げます・・・」

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