おてんば姫、ファニーの冒険 101
何時でもどこでも眠れるようにする。
そんな冒険者の特性をいつのまにか身に付けていたファニーだった。
そしてファニーが眠り始めた時、高々とファンファーレが鳴り響き、ルーグ剣闘大会の開始が告げられていた。
ルーグのアリーナは楕円形の建物である。
闘技場は砂地になっており、倒れても怪我しないようにできている。
出入り口は東西南北に設置されており、東と西は人間用、北と南は理性など無い魔獣用だ。
ルールはたった一つ、生か死かそれだけだ。
ただし女性の場合は負けたら殺される代わりに勝者に陵辱を受ける。
また選手が奴隷が奴隷の場合、勝ち続けて優勝すれば自由の身になれた。
制限時間内の勝負がつかなかった場合、観客投票によって勝者を決める事になる。
剣闘大会開催のファンファーレが鳴り響く頃、アンナ達はようやく自分の席を見つける事ができた。
シャーリーの斡旋によって得た席は、最初に買った席より剣闘場に近い場所にあった。
観客のほとんどは魔物と、全裸に近い格好をした女性ばかりだった。
逆に普通に服を着ているアンナたちのほうが逆に浮いて見えた。
市長による開催の挨拶が終わると、早速第一試合が行われた。
その試合内容は凄惨の一言だった。
アイラ島のとは違い、剣術の冴えではなく、命の奪い合いを見世物にするものであった。
その内容たるはアンナが顔をそむけ、ラーストチュカもショックで顔を引きつらせるほどだった。
しかし周りの観客達は慣れたもの。
むしろもっとやれとばかりに喝采を送るものが出るほどだった。
(こんな試合にもし姫様が出たら・・・)
そう考えただけでも卒倒してしまう。
さらにラーストチュカのほうは出場する兄の身も心配しなくてはならなかった。
幸いな事に、ジュラ―ブリクもシャーリーも予選を順調に勝ち進む事ができた。
予選が終り、いよいよ特別招待試合の開催が迫って来た。
「さて、どうするでござるかな……」
ファニーのいる控え室の前でシャーリーは考え込んでいた。
最初は衛兵を買収なりして控え室に入ろうかと考えていたが、その衛兵が中身空っぽの魔法で動く鎧━━リビングメイルでは無理な話である。
「どうですかシャーリーさん?」
様子を見にアンナ達がやってくる。
「駄目でござる。
ネメシスが言うには中から微かにミネルバの剣の波動を感じるそうでござるが…」
「それではっ!」
「されど、何か結界のようなものがあって、念話(テレパシー)で呼びかけても返事がないでこざる」