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blood&witch
官能リレー小説 - ファンタジー系

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blood&witch 115

「…やられたわい…」

ため息を吐きながらリックが椅子にへたりこむ。
「奴め…船の設計図を持っていきよった…」

「「「「「「え?!」」」」」」

「しかもこちらのエンジンもヤられとる。急いで修理をしても、2週間以上かかるじゃろうな…」「そんな…!」
「向こうも船を一隻作るのに、最短でも2ヶ月はかかるだろうからすぐには追いつかれはしないだろうがな」
だが、大砂洋に出ても『神の眼』が追いかけて来ることに変わりはないのである。
「ま、どっちにしてもこの構造の船じゃ、大して人数は運べん。いきなり大軍送り込むってこたあ、ないだろうが…」
リックは肩をすくめながらそう言った。
だが、本人もわかっているだろうが、誰の気休めにもなりはしなかった。数に頼るような組織ではないのだ。町一つ制圧するのにも、上位の粛清官クラスならば何人も要するまい。
「なるべく急いでくれ」
フェイクに言えるのは、それだけだった。
「そうじゃな」
リックは顎をさすった。
「じゃが問題は、組織にワシを生かしておく理由がなくなったってことだ」
続いた言葉に、エリックが顔を上げた。
「こいつを修理するとなりゃ、雲隠れするわけにもいかん。あんたらが守ってくれても、二週間生き延びられるかは微妙なところじゃな」
「あんたの命を狙いに来るかはわからねえだろ。野郎も結局、足止めと設計図が目的だった」
「悪いが、そこまで楽観的にはなれんな。あんたらの足止めがしたいなら、そりゃワシとせがれを消した方が確実じゃろうが」
「……」
フェイクは押し黙った。同じく難しい表情をしたステイと顔を見合わせる。
二週間。守らなければならないのは、この船、工場、リックとエリック。移動はできない。相手は船に少し傷をつけるだけで、その期間を延長することができる。
仲間の力量に不足はない。だが…少々条件は悪いと言わざるを得なかった。少人数で拠点防衛をするのに、二週間は長い。
自然、何人かがそろって思案するように腕組みをした。あるものは額を押さえる。
そのとき、黙っていたエリックが、いきなりあっと声をあげた。
「親父、親父」
「なんじゃい、エリック」
興奮ぎみにつめよるエリックに、リックはびっくりした顔で質した。
「あれ、いけるんじゃないか? ほらあの注文品の…」
「おおっ」
なぜかエリックは語尾を濁したが、リックには彼の言いたいことが通じたようだった。ぽん、と手を拍つ。
「お前、冴えとるじゃねえか」
「だろ?」
エリックは得意げに笑った。
「ちょっと待って、何のことです?」
そのまま工場の奥に駆け出そうとする親子に、慌ててステイは待ったをかけた。
二人は何か解決策を見つけたようだが、外野にはさっぱり話が見えない。
「ほれ、例のアインのガキの注文品じゃよ。こいつぁちょうどいいわい」

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