幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 36
―――蒼木ヶ原市・南区―――
南区は蒼木ヶ原市で最も賑やかで、最も混沌とした場所と言えた。
ここには遊園地や映画館、カラオケBOXにボーリング場と、様々な遊戯施設が集まったいわゆる『歓楽区』と呼ばれる場所だった。
更に、一番南の端にはラブホテルや風俗店が軒を並べる一画があり、巷では『色街』とまで呼ばれていた。
そしてその色街の狭い道を、白面を乗せたバスは走っていた。
―――ミニバス内―――
『君、新生茨木軍でバイトしてみないかい? なぁに、簡単な肉体労働だよ』と黒服の男に誘われた白面は、相手の正体を探る為単身バスに乗り込んだ。
バスに乗っているのは、白面を誘った黒服の男と運転手、それに同じようにバイトに誘われた女性が一人と、なぜか猿が二十匹ほど………
黒服と運転手や女性からは霊力を感じるので、人の姿をしているがおそらく妖怪だろう。
猿の方は猿神配下の猿妖達で、ボスを倒され路頭に迷っているところを、別の場所でスカウトしてきたらしい。
(うっうわっ!寄ってきた)
白面がバスに乗ると、猿達がキーキー言い隣や前の席に集まってきた。
もう一人の女性の方にも何匹か寄っていったのだが、一睨みされると、すごすごと戻ってきた。
睨んだ時に、女性から強力な妖気が発せられ、白面や猿達だけでなく、黒服達までをも驚かせた。
どうやらかなり強い妖怪らしい。
「ねぇちゃん幾つだい?」
「えっと、219歳だよ」
「本当?そんな風にはみえないなぁー」
そんな他愛もない話をしながらも、猿達は白面にいやらしい視線を向ける。
チラッと黒服や女性の方を見ると、こちらの様子に気づいているはずなのに『我関せず』といった感じで窓の外を見たりしている。
(うーん……助けてはもらえそうにないなぁ)
視線を猿達に戻すと、一匹の猿と目が合い、思わずニコッと微笑んでしまった。
(それにしても、いくら猿だからってパンツぐらい穿いて欲しいな)
隠そうともしないので、猿達の剥き出しの下半身が白面の視界にどうしても入ってくる。
しかも全員勃起したじ状態であり、白面に欲情しているのは明らかである。
(まぁ、私みたいな美人目の前にしたら当然か)
結構能天気な事を考えながら、これからどうするかを考える。
(とりあえず、このお猿さん達とは仲良くしておいた方がいいかな?)
だったらこの状態で、親密になる方法は一つ。
白面は早速行動に移すことにした。