僕らの天使 15
「だって、すごい大きい家に住んで」
「それはたまたま。ロシアいたときは普通の家だったよ」
「そうなんだ」
それは、そのまま受け取っておくことにした。
通りに沿った細長い公園を歩いていく。
「きれいな花も緑もあるし、街も見えるし、なんか不思議だけど、楽しいね」
アーシャは周りの一つ一つを見逃さないように、というふうに視線をあちこち向けながら歩いていた。
何もかもが新鮮に見えるんだろう。ちょっと落ち着きのない姿が学校とはギャップがあって可愛い。
そして、服の上からでも胸が大きく弾んで…僕にとっては嬉しい?反面、ちょっと大変。
「ここから大学に行くよ」
さくらさんが視界に入った地下鉄の駅の入り口を指差した。
僕たちは地下鉄のホームへと降りていった。
「デンシャだ、デンシャだ」
アーシャがはしゃぐ。僕にとっても地下鉄はこれまでの人生で何度も乗っていないが、アーシャには電車自体はじめての経験のようだ。
地下鉄を一回乗り継いで、降りる駅につく。結構あっという間だ。
階段を上って再び地上へ。
さっきよりも緑が視界に入ってくる。巨大な森が近くにあるような感覚だ。
「ここもキャンパスの一部ね」
「本当に広いんだね、H大って」
さすが規模も県内ナンバーワンクラスの大学である。
「どうかしら、傑くん」
「ええ…初めて見ましたけど、なんか、いい感想が見つかりません」
僕たちは緑の中を歩いて、やがて大きな通りに出た。
「この通りの両側に、大体の学部が揃ってる。見たい学部とかある?」
さくらさんの言葉に僕は回答を考えた。あまり、何も考えていない風は出したくない。
「どちらかというと、理系の学部が見たいです」