学校で夜の宴 10
扉を出ると、教祖様が待っていた。
「礼司様をお連れしました」
「ご苦労様」
家から運転してきてここまで案内してくれた女性は僕と教祖様に頭を下げて、もと来た道を戻っていった。
「お忙しいところ、わざわざありがとう」
「いえ、こちらこそ、お呼びいただきありがとうございます」
僕と教祖様は歩きながら話した。
「ひかるさんやアイリさんに会いに行ったことはありますか?」
「でも、いきなり会いに行っても迷惑なんじゃ。」
会員カードに彼女たちの仕事先や自宅の住所が書いてあるからすぐにでも会いに行けるが。
「迷惑なんてことはありませんよ。きっと彼女たちは礼司さんの言うことは何でも聞いてくれます。」
何だろう。ただ教祖様と話してるだけなのに、教祖様とやりたくなってきた。教祖様はそれだけ魅力のある女性ということなのか?
「実はあなたが猊下と分かったのも今日なんです。この間は誰がそうなのかよく分からなかったし、高僧の目を簡単に見てはいけないとテレビでやってたので、確認できませんでした」
「目を合わせたとかは大した問題じゃないの。むしろ自分が見えているかね」
「迂闊でした、猊下。あの二人が出すぎたマネをしているとばかり思いすぎて、それに…なにかすれば忠誠を示せるんじゃないかって…」
彼女こそが昇天教で一番の美女に見える。色白で長くて艷やかな黒髪、清楚に見えてあふれる包容力や母性をも備えている。まさしく、嘘をつけない相手だ。
色っぽいのにまるで下品でないし、豊満でありながらアンバランスでなく背筋がピンと伸びている。おそらく、見た目よりも年齢を重ねていてそれが慈悲や情け深さにもつながっているのだろう。
「色欲は罪なんかじゃない。ましてやそれから目を背けたり金儲けに利用するほうが罪。享楽という利益を分け隔てなく共有し、それでいてマイノリティとしての立場を守る。それができる人だけが必要」
「あの、もし猊下と、その、交われれば、上のステージに上がれるなんてことはないでしょうか?」
「つまんねぇ事してんじゃねえよ」
「すみません、ちょっとやれたらラッキーって思っただけです。考えが足りませんでした」
「おいおい、瞬殺だよ」
「げ、猊下ッ!?」
「自分から前見て歩けなくしてどうすんだよ」
「ど、どうか、お許しを、非礼を心からお詫びします」
「うふふ、最近お気に入りのマンガからちょっとセリフ借りちゃった」
「猊下、なんてお茶目な」
「でも、今すべきことはわかったでしょ?」
「はい」
教祖様と僕はさらに少し歩いた。
「18歳男性って貴重な存在で。成人女性と対等に関われるし、女子児童とも、真剣な関係を築くなら、関わっても世間は犯罪とは見ない」
僕は、児童を守る話と、さっきの男子児童が成人女性に遊んでもらっているシーンを思い出していた。確かに、男子児童の場合は、形式的には犯罪かもしれなくても、世間は彼らを被害者とは思わないだろう。