陣陽学園〜Fight School〜 74
破れかぶれで殺人罪覚悟の狼藉も少なくない、それが劣等課の日常だ。
敷地内の(室内にまで設置された)監視カメラのお陰で、今回は十分に正当防衛で通る状況らしく事情聴取の一つもない。
モヒカンを確保した警備員達の姿が見えなくなる頃、一発抜いて落ち着いた水島が着衣を直していた。
「それと八霧出流、これが明日以降の予約待ちリストだ。」
「あぅ…。」
今夜の(元)大物女優と大差ない曲者ばかり、そしてスケジュール的にも時間帯が重なってしまう御得意様までいる。
取り敢えず草食女子のBL小説作家にはオラオラ君の真也をあてがってはどうだろうか。
こっちのドM競馬騎手にはああ見えて実はSでもMでもイケるアキに回してくれないか。
などと仲間内の男の娘に恩着せがましくならない程度で仕事を回してくれる様に交渉する。
こうしたさり気無い付け届けによる人心掌握も捨てたモノではない。
男の娘以外にも他ジャンルで注文があれば横の繋がりで仕事を回して貰っている。
近い所、劣等科で例外的に接客時は男子ブレザー着用を許された一部の専業ゲイ男女。
その他SMにスカトロ、マッサージに添い寝や耳かきと幅広い。
大半は志を忘れ仕事の旨味だけを受け取り、出流に賛同して劣等抜けを目指す者は他ジャンル含め十人にも満たない。
しかし志あれど武道家として再起不能な者や多少の義理を感じた者、間接的な協力者となる生徒は増えつつあった(南風紀子と妊婦達が良い例だ)。
世知辛い話だが無名の推薦と言いつつ『八霧出流』の存在をほのめかす程度、水島オデ子が上手く案配している。
歯痒いが私情で姉の事ばかりにも構っていられないのだ。
そして、今後の為にも出流自身も色々と覚悟を決めないといけない時期に来てる事を実感していたのであった。
・・・そして、2週間程。
タイムリミットまで2週間。
出流は相部屋男の娘達の格闘訓練を見ながら色々考えていた。
アキや真也もとりあえずは劣等抜けする気になったようで、他の劣等抜け目指す男の娘と共に訓練中・・・
この調子だと2週間で間に合うだろうと出流は見ていた。
男の娘達をやる気にさせたのはそう難しい事では無い。
出流が彼らの『オンナ』になってやっただけだ。
これが、出流がしなければならないと思った覚悟の一つ。
出流の最大の武器は格闘術ではない。
このレベルはいくらでもいると既に思い知らされている。
なら最大の武器は何か・・・
それは、出流が『イイオンナ』である事だ。
肉体の改造は結構な段階に来ているが、そもそも出流は生物学的に男だ。
だが、出流を抱いた男達は口を揃えて言う。
お前はイイオンナだと・・・
ノンケすらその気にさせ、リピート率が相当高い。
女のような容姿だからと言う理由じゃ無い。
身体の具合だけでもない。
犯される時の表情や声色、それらがそそられるオンナそのものだと言う。
口淫だけですら今では万の金が動くレベル。
男をその気にさせる天性の淫売と言った所であった。
半分は自覚があった出流だが、もう覚悟を決めて、その持てるスキルで男の娘達を身体を使ってやる気にさせた訳である。
ここまで上手く行くとは思わなかったが・・・
男の娘達はこのまま行けば大丈夫だろう。
そうなってくると次の懸案が出流の頭をよぎる。
姉の事だ。
それに関しても彼は決断を求められる時期に来ていた。
あの例の(元)大物女優から聞いた話だ。
・・・その晩の行為の後、彼女が漏らした言葉。
「貴女が本当に女の子だったら・・・奥の院に推薦するのにねぇ・・・」
「そんな事できるんですか?」
思わず聞き返す。
今の立場はどうあれ、彼女は有力者であるし、この世界に顔が利くのは知っている。
「ええ、あそこは上客の推薦が一定数ある女の子だけがいけるのよ・・・貴女なら女の子にさえなれれば喜んで推薦するのにねぇ」
普段から出流に性転換を薦める彼女の言葉がどこまで真実かは分からないが嘘ではなさそうであった。
性転換すれば推薦される可能性は出流の常連客の顔ぶれからして高いのはある。
だけにこの2週間悩んでいたのだ。
無論、投薬による改造処置は進み、Dカップ程のもう偽乳付けなくても『おっぱい』レベルにまで胸は膨らんでる。
姉や母から導き出される遺伝的な問題からすると、もっと大きくなる可能性は大だが、そろそろ決断しないと引き返せないレベルなのは確かだ。
正直、男でいる未練はほぼ無くなってる。
コンプレックスの塊だった粗チンとオサラバできるのがかなり嬉しいと言う事情があったりする。
それに自分がチ○ポ咥えるも犯されるのも好きなビッチであると自覚もある。
「奥の院の情報がもう少し欲しいよな・・・」
性転換よりむしろ悩みはその事だ。
男に未練は無いがもう少し情報は欲しい。