更紗百人斬り! 1
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人は多かれ少なかれ、欲というものを持っている。食欲、物欲、睡眠欲、性欲、金銭欲などなど。
そんな数ある悩ましい欲を、同時に満たせたら……誰もが思い描く願望ではないだろうか。
この物語の主人公、柏木更紗も、満たされたい願望を胸に抱いて日々を過ごしている。
彼女、柏木更紗の中に渦巻く欲望とは、一体何だろうか?
今回は、学園生活という視点から、垣間見ていただきたい。
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夏も随分側までやって来た。気だるい暑さの中、授業も6時間目に突入。
で、あるからしてーなんて、センセーは漫画の1コマみたいな台詞を言っている。あ、ここはテストに出るのね、ふんふん。あと11分かぁ〜
私は頬杖をついて、そんな他愛もない事を考えている。
規則的に時を刻むまん丸い時計から、窓の外の無駄に晴れ晴れとした青空へと視線を移す。窓際の席なのに、開いた窓から吹き込む風は生暖かい。
私はこんな時を過ごす為に、高校に来てるんじゃない。
ホントにやりたい事がある。その為に──
私には、叶えたい、きちんとした目標がある。
それは、AV女優になる事。まぁ、きちんとした、って言うのもはばかられるかな……でも、気持ち良い事してお金貰えるなんて、一石二鳥じゃない?
性欲と金銭欲を同時に満たせるなんて、すごくオイシイ仕事なんじゃないかって、私は思う。
で、都合の良い事に、私のパパはAVの監督をやってるの。それも、かなり名の知れた。パパのレーベルでデビューすれば、ブレイク間違いなしなんだけど……パパは、仕事に厳しい人なの。
親の七光りでデビューさせる訳にはいかない。それなりの実力をつけてからだ。パパはそう言って私の願いを一蹴する。
それでも食い下がる私に、パパは1つの条件を出したの。それが、“百人斬り”
校内の男達百人と交わり、勝利する事。勝利、つまり、イかされずイかせる事、それを達成出来たら、AV女優として華々しくデビューさせてくれるのだそう。
無理は承知。でも、私はそれでもAV女優になりたい。その想いは譲れない。だから今日も頑張らなきゃ!
「ではこの問題の答えは……柏木。答えなさい」
「へっ?」
拳を握りながら立ち上がったものの、私に数学という暗号文書の解読など出来ようはずもない。四十八手を全て答えよ!だったら楽勝なのに……
「どーした? 解らないのかー?」
あぅ、言葉責めかぁ。いつもは責める方なのに。センセー絶対Sだ。
そんな考えを巡らせていると。
「4x−9」
背後から小さな声。私は咄嗟にその声をオウム返しする。
「4x−9です」
「正解! よく出来たな」
さっきのSっ気が嘘のように素直に褒めるセンセーに私は愛想笑いをしつつ、席に着く。