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後輩
官能リレー小説 - 学園物

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後輩 1

憧れて、焦がれて、夢にまで見た肢体が今、天音の体の下にあった。
目を閉じた、無防備な姿勢で。
肌に、鼻を埋める。
甘やかな匂いが、鼻腔を埋め尽くした。
「沙織、先輩……」
かすれた声で、天音は肢体の持ち主を呼んでみる。
扇状に広がったまつげが震え、少し色素の薄い瞳が現れた。
「天音君……?」
コンプレックスだった女の子のような名前に、この時ばかりは感謝する。
本当に、自分の名を呼んでくれていると思うから。
「ほ、本当にいいんですか?」
天音の上擦った声に、沙織はかすかな微笑みで答える。
「うん」


・・・一年先輩の『菊井沙織』は『高梨天音』にとって憧れの存在だった。
入学して学校で迷っていた天音を沙織が見かけたのがきっかけだった。
やさしく見下ろす沙織が、才色兼備のアイドル的な存在とは後で知った。
それ以来、天音にとって沙織は憧れ見上げる存在になったのである。

沙織に憧れを抱いた天音は、すぐに沙織と同じクラブに入ることを決意した。
この辺りの思い切りの良さと向こう見ずさは彼の長所であり短所であったが・・・
沙織のクラブは『手芸部』・・・入ってみて驚いたのは女の子7人(ほとんどがお姉様であるが)だけのクラブ。
天音が記念すべき最初の男の子となったのだ。
彼にとって幸運と言えたのは、手先が器用で可愛らしい男の子・・・しかも喫茶店経営の両親を持つ彼は、事の外紅茶を入れるのが上手かった。
それが、お姉様方のハートを掴んだのだ。

「ん〜、おいし!天音ちゃんの淹れる紅茶、最高よね〜!」
部活中に挟まれるティーブレイクに、天音がお茶を淹れるのが手芸部の習慣となっていた。
お茶に付き物のクッキーやパウンドケーキも、天音が人数分を家から持って来る。
「ねえ、最高よね?天音ちゃんの淹れるお茶」
じっくりお茶を楽しんでいるところにいきなり話を振られ、沙織はきょとんとした顔になった。
「え?」
沙織は慌てて、天音を見る。

「ええ、そうね。天音君の淹れるお茶、とってもおいしいわ」
不安げだった天音の顔が、ぱっと明るくなる。
−外見が可愛らしいからという理由で、お姉様方は天音の事をちゃん付けで呼ぶ。
そんな中で沙織だけが、天音の事を君付けで呼んでいた。
天音健気で可愛らしい少年である天音は、確かに年上(同い年も入るが)の彼女達の母性本能をくすぐる。
手芸部の部長『雫石瀬名』に言わせれば、天音は『食べちゃいたいほど可愛い』らしく、彼女達が『天音ちゃん』と呼ぶのはそんな所からである。
その上、彼女達は天音に気軽にスキンシップを行い、初心な少年が真っ赤になるのを楽しんでいたのだ。
この場の全員にとって、天音は『可愛い弟』のような存在になっていたのだ。

沙織にとっても天音は『可愛い弟』のような存在なのは確かだ。
多少のスキンシップもする事はあるが、この中では非常に少ない方だ。
嫌いな訳ではない・・・普段から自分に健気に尽くしてくれる、この少年を好ましく思っていたし、少年の出してくれる紅茶は沙織のお気に入りになっていた。
『好き』と言う感情に、天音を『男』として意識する部分はほとんどないのだが、お姉様方に健気で可愛らしい少年である天音は、確かに年上(同い年も入るが)の彼女達の母性本能をくすぐる。
それが、天音を『君』付けで呼ぶ理由なのかもしれない。

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