学園の牝 126
「あら?琴さん、いかがなさいました?」
「す、すみませんっ!その・・・そう、急用を思い出したので、ぼくはこれで失礼しますっ!」
琴はそう言うと、静たちの返事を待たずに一目散に走り去ってしまった。
嵐のように去った琴を見送りながら、静たちはクスクスと笑う。
「・・・どうやら、自分のすべきことがわかったようですね?」
「しっかし、あのコも素直じゃないね。
『急用を思い出した』なんて、ご主人様のこと考えてるのバレバレだっての」
「いいじゃないですか。あれも琴さんの魅力の1つですよ。
それじゃ私たちももう少ししたら悠様のところに戻りましょうか」
玲緒奈の提案に、静は『そうね』と軽くうなづくと最愛のご主人様のことを想いながら穏やかな時間をすごすのであった。
――――
ダダダダダダダダダダダダ・・・!!
走る。走る走る走る。
男子生徒の制服を着た専用奴隷が、ある場所を目指してひたすら走る。
目の色を変えた一陣の風に、周囲は驚き、何人かは声を荒げる。
しかし風と化した琴には関係なかった。
今の彼女には、一刻も早く浩二の下に駆けつけ、目的を果たす。
そのことしか頭になかった。
バーンッ!!
そしてターゲットのいる教室に入るなり、勢いよく扉を開けた。
予期せぬ嵐の襲来に、教室にいた生徒たちがビックリした様子で琴を見る。
しかし琴はそんなことなど眼中にない様子で、浩二の下にずんずんと歩を進める。
そして大魔神よろしく浩二の前までやってくるなり、浩二の手をつかんでこう言った。
「帰るぞっ!浩二っ!」
「・・・は?あ、こらっ、引っ張んなっ!?」
だが琴は浩二の、ご主人様の命令など聞こえない様子で、浩二をズルズルと引きずりながら教室を出て行く。
ガラガラ・・・ピシャッ!
「・・・ハッ!?い、いけないっ!
は、早くあのバカ女から浩二様をお守りしないとっ!」
「「ま、待ってください、湊さんっ!」」
突然の琴の暴挙から我に返った湊、葵&睦の3人があわてて浩二の後を追って教室を出て行く。
しかし古参組の茜と明日香は正気に取り戻してもなお、落ち着いた様子でいた。
「いやぁ〜、相変わらず琴ちゃんってやることが派手だね?」