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村の花婿
官能リレー小説 - 孕ませ/妊婦

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村の花婿 9



‐翌日‐
「本当に行かれるのですか?」
「はい、でも必ずまたこの村に来きますよ。それじゃあ色々とお世話になりました!」
ここは静さんの家の玄関先、今日こそは村を出て下山しようと別れを告げる俺に、静さんは葉に包んだおにぎりを渡してくれて言った。
「そうですか…これ、お昼に食べてください。今夜も晩ご飯用意しておきますね」
「…いや、ですから俺は村を出ると…まあいいや、本当にありがとうございました」
静さんの家を後にし、俺は勢い勇んで歩き始めた。

………
……


「ま…まただ…!」
数時間後、俺は目の前の光景に愕然とした。昨日とは別方向に向かって村を出たはずなのに、やはり小一時間ほど山中を歩くと必ず村に戻ってしまうのである。例えば村を出て南へ向かって進めば村の北端に到達し、また村から西へ向かって進めば村の東端に到達するというような具合に…これで五回目だ。
「一体どうなってるんだ…道に迷うとかそういう問題じゃないぞこれは…」
俺の頭の中に、ある恐ろしい仮説が浮かんだ。
閉じた空間…この村は俺達の住む世界とは別な次元に存在しているのではないだろうか。そして俺は何かの拍子にこの閉鎖空間へと迷い込んでしまった…。
俺はゾクッとして思わず身震いした。あの老婆の言葉が脳裏に蘇る…。
『残念ですが貴方様はもうこの村から出る事は出来ません…』

「う…うわあぁぁぁぁぁっ!!!?」
俺は衝動的に叫んだ。そしてなりふり構わず走り出した。

冗談じゃない!いくら良い村だって一生閉じ込められたままなんて絶対に嫌だ!俺は帰るんだ!元の世界に帰るんだ!!

「ハァハァ、やっぱり無理か…」
狂ったように叫びしばらく走りまくったが、同じ道をぐるぐる回るだけで遂に俺は疲れ果ててしまった。
「休憩するか、このまま叫んで走っても体力を消耗するだけだ」
このまま、走っても体力を失うだけなので近くの切り株を見つけ、俺はそこに腰を降ろし休むことにした。
「白むすびだけなのに塩加減が良い塩梅で美味い!」
疲れて腹が減って、静さんの作ったお握りを口にいれ頬張り俺は余りの美味さに舌鼓をうった。
「やっぱ、静さんの料理は美味いなぁ…」
俺は静さんの料理の美味さを賞賛する。
「…何か胸が痛い。静さん、心配してるだろうなぁ…」
それと同時に帰ろうとする俺のために弁当を作ってくれた静さんの顔が浮かんで胸が痛くなった。

「…ところでここ、どこだろう…?」
腹も膨れて少し落ち着いた俺は辺りを見回してつぶやく。森の中をデタラメに走り回っている内にどこだか分からなくなってしまった。
「ま、心配する事は無いか…どうせどっちに向かって行ったって最後には村に辿り着くんだからな」
俺は腰を上げて歩き出した。

数時間後。
「…………おかしい。村に着かねぇ」
もしや閉じた空間(仮説)の中で更に迷ってしまったか?
考えてみれば、俺は今までどっちの方角へ向かおうと必ず村から出て真っ直ぐに進んでいた。
それを適当に走り回って延長線上から逸れてしまったのだ。
「やばいぞ…元の世界に戻れない所か、このままじゃ村にすら戻れないかも…!?」
俺は空を見上げた。日は既に西に傾き始めている。あの太陽の沈む方が西だな…いやいや、ここが本当に異次元空間だとしたら、東西南北が判った所でどうしようも無いじゃないか…。

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