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肥育の儀
官能リレー小説 - アブノーマル

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肥育の儀 1

某県の沖合に浮かぶ孤島の漁村では十年に一度、世にも奇妙な儀式が行われる。
千年の歴史を持つというその儀式は村人以外に知られる事無く脈々と受け継がれて来た…。

この村に一人の少女がいた。
名を千歳(ちとせ)と言う。
今年17歳になる彼女は、こんな農村には似つかわしくない程の美少女でありながら、田舎育ちらしく純粋な少女だった。

「千歳、明日、学校が終わったら神社に行きなさい」
ある夜、食事の席で彼女の両親は千歳に告げた。
「うん、わかったわ。でも何で?」
「…実はね、来年この村で十年に一度の祭があるんだが、お前にその祭の“巫女”をやってもらう事に決まったんだよ。今からその準備をしなきゃいけないからね」
「そんな大役を私が…!?でも一体どんなお祭なの?」
「それは行けば分かるよ…」
今ひとつ歯切れの悪い両親、千歳はどうも腑に落ちなかった。

翌日、千歳が言われた通り神社に行くと、そこにいたのは一人の巫女服姿の美しい女性だった。
風音(かざね)という名の神社の娘で歳は25、千歳も良く知っている人だ。
「千歳ちゃん、これから儀式の準備をするから“禊ぎ(体を清める事)”をして、これに着替えてちょうだい」
風音はそう言うと千歳に真っ白な着物を渡した。
「あの、風音さん、儀式ってどんな事するんですか?」
「それは言えないのよ…」
なぜか少し辛そうな表情の風音に千歳は少し不安になった。

禊ぎを終え、白い着物(着物というより襦袢(下着)のようだ)に着替えた千歳は惚れ惚れするような美しい姿だった。
腰まである艶やかな黒髪が着物に良く似合っていて、神聖な雰囲気すら漂わせている。
その姿は同性である風音も思わず見とれてしまう程だった。
「千歳ちゃん…綺麗よ。こんな素敵な贄(にえ)ならきっと海神(わだつみ)様もお喜びになるわ」
「は?ニエ…?」
「な…何でもないわ。それより儀式の準備に取り掛かるからこっちに来てちょうだい」
「はい♪」
千歳は風音に誉められて嬉しかった。
実は彼女は密かに風音に憧れていたのだ(もちろん変な意味ではない)。

風音に連れて来られたのは四畳半の狭い部屋だった。
扉は頑丈な樫の格子戸で、明かり取り用の小さな窓が一つだけあるが、やはり格子がはまっている。
「ここで待っていてもらえるかしら?」
「はあ…でも、この部屋ってまるで…」
それはまるで牢屋のようだった。
千歳は不安になる。
「大丈夫よ。ほんの少しの間だけだから…。これも全て儀式のためなの。千歳ちゃん、あなたに危害を加えるような真似は絶対にしないから、私を信じて…ね?」
「風音さん…わかりました!」
千歳は風音を信じる事にした。

千歳が納得してくれた事に風音も安心し、ホッと溜め息を吐く。
「…それじゃあ千歳ちゃん、ちょっと用意して来るから待っててね」
風音はそう言って部屋を後にしたかと思うと、すぐに料理がタップリ盛られたお膳を持って戻って来た。
「わぁ♪美味しそうですねぇ」
「どうぞ召し上がれ」
「いただきまぁ〜す!」
千歳は喜んで食べ始めた。
「もぐもぐ…美味しい〜♪これ風音さんの手作りですか?」
「…ええ、そうよ…良かったらおかわりあるけど…食べる?」
何故か微妙に心苦しそうな風音。しかし千歳は気付かない。それだけ風音の料理が美味かったのだ。
「本当ですか?やった〜♪風音さんの料理ほっんと美味しいです。きっと良いお嫁さんになれますよ。今度私にも教えてください」
「じゃ…じゃあ私、おかわり持って来てあげるわね…!」
風音は慌てて立ち去った。一人残された千歳は思う。
(…なんか風音さん、いま泣いてた?見間違いかなぁ…ま、良っかぁ〜。それより早くおかわり食べたいなぁ〜。あんなにいっぱいあったのにもう食べ終わっちゃったよぉ〜♪)

一方、風音は…
「お父さん!私やっぱり無理だよぉ!!私には出来ないよおぉ!!」
彼女は父親である神主の前で泣きじゃくっていた。白髪混じりの頭をした穏やかそうな神主は優しさ厳しさ入り混じった表情と口調で娘に言い聞かせた。
「風音、辛いと思うが耐えてくれ。これも全て村のためなんだ。お前の死んだ母さんも泣きながら辛いのを我慢してやって来たんだよ。そうやって千年間、先祖代々絶やす事無く続けて来たんだ。それを今、我々が辛いからと言って絶やす訳にはいかないんだ。解ってくれ、風音!」
「グスン…でも千歳ちゃんの何も知らない健気な笑顔を見てたら、私、耐えられなくて…」
「心の中で一線を引け。彼女の事は人と思うな。いや、海神様の贄と決まった時点で既に人ではなくなっている。解ったね?」
「…頑張ってみるわ」
風音は涙を拭って頷いた。

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