下克上 1
「第一回選択希望選手ーーー」
野球に携わる者たちの運命の日、ドラフト会議。
プロ野球の世界に憧れる男たちはテレビの前で、指名される時を待つー。
ある山間の小さな町の公立高校。
ここに知る人ぞ知る「逸材」がいた。
立木孝太郎。
打者としては高校通算で77本のホームランを放ち(公式戦・練習試合)、投手としてはMAX150km越えのストレートと多彩な変化球を持つ。
これだけ書けば彼はプロ入り間違いない選手だと思っていい。
しかし彼本人はその夢をほぼ諦めていた。
穂高高校野球部は彼のワンマンチームと言ってよかった。
彼が投げて、打てば勝つ。逆に彼が打たれて、打てなければ負ける。
弱小校の「エースで4番」の宿命ともいえる。
県大会では1勝、2勝できれば御の字。
21世紀枠選出ですら夢のまた夢。
彼の試合を見に来るプロ球団のスカウトもいたが、彼自身は「相手の選手を見に来たんだ」と意識することもなかった。
最後の夏大会は奮闘するも、1回戦、延長12回に力尽きサヨナラ負け。
そこから月日が経ち、運命の一日を迎える。
「どうせ俺は指名されない」
ドラフトのことは全く考えず、その日を過ごす。
ドラフト会議があることなど忘れたかのように、いつも通りの日常を過ごし、学校から帰る。
今後の進路―孝太郎の中では、野球を続けることだけは、決まっている。
大学か、就職して社会人チームか、それとも日本国内の独立リーグのトライアウトを受けるか。
いずれにしてもこの町を出ることは確実だった。
家に帰ると、孝太郎は荷物を置いて私服に着替え、すぐにまた家を出る。
向かったのは歩いて3分もかからない小さな薬局兼住居。
「あら、コーくん、今日って大事な日じゃなかったの?」
「俺には関係ないんだ」
孝太郎を出迎えたのは彼より6歳年上の幼馴染・相馬凛。
相馬家はこの町で代々薬局を営んできた。
今は凛の両親と、凛の3歳上の姉・澪が薬剤師の資格を持って小さな町の住民の健康を支えている。
凛も店の手伝いをすることがあり、凛の妹の玲は孝太郎の後輩で野球部のマネージャーでもある。
「コーくんもプロ志望届け出したじゃん。もしかしたら指名されるんじゃないの?」
「まさか」
「プロのスカウトが試合に来たって玲も言ってたし」
「それは…相手の奴だよ」
孝太郎の家族は、息子が指名されるのを期待してテレビでドラフト中継を見ながら待っている。
孝太郎自身は、それが嫌だから、ドラフトが終わるまで相馬家で過ごしていたいと考えていた。
「今は…凛姉と一緒にいたい」
「コーくんも色々あるのね。私でよければ、相手するわ」
そう言って凛は孝太郎の手を引き、店の奥の住居スペースの、自分の部屋に招き入れた。
若い男女が2人で部屋に籠る。
することは、もちろん一つ―
「ううっ、ううっ、凛姉、凛姉ッ!!んっ…」
「ああもうっ、コーくんってばホントオッパイ大好きなんだからぁ…」
凛が部屋のカギを閉め、いらっしゃい、と促すと孝太郎はすぐに凛に抱き着いてベッドに押し倒す。
シャツのボタンを一つずつ外して、純白のブラを強引に剥ぎ取り放り投げると、あらわになった豊乳に夢中でむしゃぶりついた。
「ホント、試合の時とは別人よね、コーくん」
野球選手としての体力、運動能力がずば抜けている孝太郎。
精力にも同じことがいえた。