新域 1
新域。
東京の一極集中緩和を名目に、実は国家的な様々な実験を行おうとする、東京西部に設置された自治体。
初代域長選挙の結果、弱冠30歳のイツキ カイカ氏が当選した。
次は域議会議員選挙なんだ、というようなニュースがテレビなどで流れる中、突然、そのニュースは入る。
「ただいま入りましたニュースです。新域の中央記念公園で、集まった、約60人の男女が突然服を脱ぎ始めました」
新域は注目されているため、中央記念公園には複数のカメラがすでにあった。速やかに、それらカメラはその現場に移動し、約60人を撮し始める。そして、すぐに局でモザイク処理しなければならない状況になる。
「中央記念公園の鈴木さん、そちらの状況はどうですか?」
「はい…服を脱いだ方々は、ご覧の通り、男女ほぼ同数で、中学生くらいから、中年までの様々な年齢で構成されています…明らかに、公然わいせつと思われるのですが、まわりを見ると、警備員はただ遠巻きに見るだけで…あ、動きがありました。目の前の男性と女性が、抱き合いました…」
映像はスタジオに変わる。
「ここで、イツキ新域域長の記者会見が入っています。記者会見に切り替えます…」
「新域では、いろいろな規制改革を試みます。まず最初に、性の自由化を、実施します!」
公園はとっくに映像の中継はできない状況になっていたが、SNSや動画サイトにその様子は次々とアップされており、運営は問題ある画像や動画を端から消していくが追いつかない。
「自由といっても、暴力を肯定することはありません。強制性行罪は維持されます。つまり、レイプは、新域でも犯罪です。また、13歳未満の児童との性行等は犯罪ですが、新域ではそれ以上の年齢の皆さんには性的自己決定権を認めます。新域では13歳以上の性的行為を制限する条例は設けません」
「うーん…」
東京地検特捜部検事の正崎善はそのイツキカイカの演説をテレビで見ながら頭を抱えていた。
薬の誇大広告の話から新域域長候補だった自明党の大物のスキャンダルを追って、部下の突然の淫乱化を経て、今この状況を迎えていた。
「正崎さん、追っていた女性の件なんてすが…」