いけない!ユリ先生〜蒼樹紅の結婚生活〜 10
夫のあまりの変貌ぶりに、すっかりテイコウする気力を失ったワタシ。
顔をおおった指の隙間から、カズタンを見上げるくらいしか、出来ないんデス。
(…あ)
とワタシ、はっとなった。
本人以上に激しく暴走したモノが、カズタンのズボンの股間を熱く、持ち上げていたんデス…。
…すごい。
本人も別人だケド、こっちも、いつものポークビッツ並みのとは、全然別チンなんデス。
…かちゃかちゃ。
暴走カズタン、いよいよ、ズボンを下ろす気配。
ワタシの右脚だけは持ち上げられたままだケド、左脚は、ズボン脱がなきゃだから手を離しちゃったみたい。
(ああ…カズタン♪)
別人のようにたくましくなった夫を見上げながらワタシ、なんだかうっとりしちゃったんデス。
なんだかまるで、夫に、今から犯されちゃうような、アヤシイ気分。
サイズ的に問題のありすぎた吉田サンのとき以上に、今のカズタンなら、オシッコをもらしちゃった以上の快楽を、ワタシに授けてくれそう♪
…そのイキオイで、いっそ、新たな生命も、授けてくれないカシラ?
そうしたらワタシ、いくらカズタンのためだからって、夫以外の男のヒトと、カラダを張った冒険をしようなんて、二度と思わないハズなんデス。
(さあ…さあ)
ワタシ、いつしか目を閉じて、暴走初号機が振るうロンギヌスの槍に貫かれる瞬間を、心待ちにしてた。
(さあ早く…はやくぅ♪)
(…♪)
(……。)
(………?)
あ、あら?
大きな期待にまたも、はしたない処を濡らし始めてたワタシ、再び目を開けた。
…開けたんデスケド。
ワタシに馬乗りになったままのカズタン、哀れにしぼんだ股間を露出させたまま、どうやら気を失って、固まっちゃっていたんデス。
カーテンの隙間からのわずかな光に照らされたその姿はまるで、勝利を確信した表情を浮かべて死んでしまった悪魔戦士のそれのようデス。
満足しきった表情にふと、彼の腰のあたりを見ると、ワタシの中に授けるハズの貴重な体液、たっぷりと、脱いだパンツの中に吐き出しちゃってたみたいなんデス…。
もう、ガッカリ。
ガッカリなんデス。
暴走したエヴァなら、アンビリカブルケーブルからの電力供給なしでも動き続けてるのに。
暴走カズタンのほうは、たった一回の射精だけで気を失っちゃう、アンビリーバブルなほどの軟弱ぶり。
(もう…毎回こんなだったらワタシ、また、他の誰か、呼んじゃいますからネ♪)
とワタシ、固まったままの夫の頬にキスをしてから、荒れ果てたリビングを片づけるべく、いそいそと、行動を開始、したんデス…。
〜数日後〜
「…いや〜平丸君、いなくなったって聞いて、一時は心配したが、こないだの読み切り用のネーム、なかなか評判イイよ?」
副編集長になっても、新担当の小杉サンと共に顔を出して下さる吉田サンが、ほっとしたように言いながら、カズタンの肩を叩きました。
「ヨ、吉田氏…この前は打ち合わせすっぽかして悪かったがな、でもあれ以来、すごく調子が良いんだ!!」
快活に答えながら、原稿から目を離さずにペンを走らせる、夫。
「…調子がイイって?」
「ああ…なんだか奇妙な夢をみた気がしたんだが……内容はあまり覚えちゃいないが、今でも時々、見た後でドップり、気分が落ち込んでしまって……」
「ね、ネガティブな平丸君らしい話だナ」
そう言って、肩をすくめる吉田サン。
カズタンと吉田サンたちの為に紅茶を運んできたワタシと、目が合った。
事情を説明すると、
あの出来事の後、ワタシはまず夫ではなく、コタツの中の吉田サンを起こしたんデス。
で、ネームに苦しむ夫を見かねて、再びネガティブさを取り戻し、新たなネタを思い付くようにしてあげるための狂言失踪だったこと、彼に話したんデス。
ただ、カズタンの目の下に刻まれてたクマ、あれはワタシの勘違いで、デザートのチョコバナナのチョコレートが付着してただけ、だったんデスケド。
事情を理解してくれた吉田サンの協力もあって、壊れた折れ戸も、コタツも、カズタンが気を失ってる間に、全部新品に取り換えてもらった上、カズタンも着替えさせて、寝室に運んでもらったりしたおかげもあって、当のカズタンは、アレがすべて悪い夢だったと思ってくれてるんデス。
お金については、全部吉田サンが支払って下さいマシタ。
その代わり、奥様にはナイショにしといて欲しいみたい。
(だって吉田サンご夫妻、ワタシたち夫婦の仲人さんなんデスもの♪)
だから、あの出来事を知ってるの、ワタシと、吉田サンのふたりだけナンデス♪
で、ワタシの“内助の功”が功を奏して、新ネタを思いついたカズタンの読み切り『僕だけは寝取られない』が、新たなジャンプブームを巻き起こすのは、また別のお話し。