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宮野志保≠シェリー
官能リレー小説 - 二次創作

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宮野志保≠シェリー 2

素っ気なく言い放つ哀にコナンは目を細め、自分も彼女の入れた紅茶を味わう事にする。
少しだけ苦みのある香ばしい紅茶が口内に広がり、満足感が膨らむ。料理が得意な彼女の入れる紅茶は、とても美味しかった。
コナンはそれを一気に飲み干すと哀に視線を促す。
呼び出しておきながら、彼女はその話題に一切触れない。
紅茶のお代わりを要求する序でに、自分からその話題を切り出してみた。
「で、灰原、用事ってなんだ?」
紅茶を入れる哀の手が止まった。
その様子に不思議そうに眉を潜めるコナンに、彼女はゆっくりと振り返る。
コナンはドキリとする。
無表情を保っていた哀が、何処と無く哀愁を漂わせ儚げな微笑を浮かべた。
「随分と待たせてしまって……御免なさい、工藤くん」
その赤く綺麗な唇が言葉を奏でた。最も重要なそれを。
「……解毒剤が、完成したの」

一週間後、彼は『江戸川コナン』と言う仮の姿を捨て『工藤新一』と言う本来の姿に戻った。



早朝、彼を心地よい夢から現実へと導いたのは容赦なく瞳に訴える陽の光でもなく軽やかな小鳥の囀りでもなく、家中に幾度となく響き渡る耳障りな電子音とあの声だった。
「しんいちーっ!!」
重たい目蓋を抉じ開けて窓の外を確認する。
思った通りだった。すっかりと怒り顔の彼女が、門前に立っている。
「新一っ!早くしないと遅刻するよー!」
ピンポーン――ピンポーン――と執拗に鳴る電子音と彼女の声が揃ってしまっては起きない訳にもいかない。
新一としては学校は二の次でこのまま甘美な夢へと再び舞い降りても良かったのだが。
彼は呆れた表情をして彼女に返した。
「わーったよ!今支度すっから待ってろ!」
急いで制服を腕に通し鞄を引っ掴む。階段を駆け足で下りて行き、歯を磨くと寝癖はそのままに外へ出た。
門前で彼女が仁王立ちしている。
「もう!新一ったら遅いんだから。私まで遅刻しちゃったらどうするのよ?」
「悪かったよ、蘭」
心にもない謝罪を述べて新一は彼女――毛利蘭の横へ並ぶ。身体が小さかった頃、居候させて貰った毛利家の一人娘であり新一の幼馴染みだ。
ふわぁっと大きな欠伸が一つ洩れ、それを見ていた蘭が顰めっ面をする。
そんな蘭に気付かないのか新一は大きく背伸びをすると、さっさと学校への道程に足を進める。
暫く歩いて、蘭が後ろから着いて来てない事に気が付いた。
「蘭?どうしたんだよ?」
「……」
沈黙を守る彼女は嬉々しい微笑をしていた。
疑問に感じた新一は怪訝顔のまま蘭に駆け寄り、その顔を覗き込む。
「なーに、嬉しそうな顔してんだよ?」
「べっつにー」
そう言いながら、蘭は先の道程を歩く。
疑問を抱えた頭で蘭の後を追おうとすると、彼女が唐突に振り返る。
優しげで涼やかな笑顔だった。
「本当に新一が帰って来たんだなーって、嬉しかっただけだよ」
「蘭……」
新一がコナンだった頃、彼は自分が側にいないせいで悲しんで来た彼女を見ている。この言葉が心の底からだと言う事は十分過ぎる程に理解出来た。

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