etoile ‥歌劇の星‥ 1
清く・正しく・美しく。
このフレーズをモットーとする女性のみで構成された歌劇団。
元は温泉地の客寄せの為に少女たちを集めて作られたのが始まりであるが、創設から百年近くが過ぎた現在はより輝きを増して確固たる地位を確立していた。
厳しい上下関係は殊更に有名で、女性特有の集団意識は時に暴徒の如く迷走を始めるのだった…。
「ぁあッ!……ぅ…や、ぁぁんっ!!」
聞けば直ぐにそれと分かる甘く切羽詰まった声が、空き教室から微かに零れていた。
劇団の建物の上の階は稽古場に使われる教室が幾つも並んでおり、稽古中の教室からは音楽が流れている。
その中の一室。
稽古着としてレオタードの上に身に着けていたのであろうスカートは既に床に落ちていた。
肩からずりさげる形でレオタードの上部から零れた胸は背後からひしゃげるくらいに強く揉まれ、股の部分をずらして胎内を探っているのであろう手付きは粘着質な水音を立てて蠢いていた。
「も…っ、ゆるし……ッ、あぁぁぁっ!!」
許しを乞う声は限界を越えたものへと変わり、壁際に押し付けられるように犯されていた躰は力無く床に崩れた。
スカートの花びらの上に躰を丸める画を上から見下ろした爽(そう)は「親指姫のようだな」と、おとぎ話を彷彿として漏らすのだった。
愛液に塗れた指を相手のレオタードで拭うと、声を掛けることさえなく爽は部屋を後にする。
明日峯 爽(あすみね・そう)。それが彼女の芸名である。
170cmの身長は女性としては長身であるが、男役としてはごく普通の部類であった。
彼女は男役でトップスター
レオタード姿で倒れている娘は
今年入門した新人である。
この世界まさに弱肉強食である
新人には
はむかうような気持ちなどない