彼と彼女の成長記 20
その目に気圧される俺。
今までリング上で対峙した誰よりも気圧される瞳だった。
「でも、これでお話ぐらいはできるわ」
少し曜との距離が離れ雰囲気が和らいだせいか、圧が無くなりホッとする。
と同時に、曜の言葉に喜んでしまっている自分がいた。
「話はそれだけよ、傑」
「曜っ?!」
再会してから初めて俺の名前を呼んだ曜は、スッと俺から離れる。
そして、振り返らずに俺の声にも応えずに去っていく。
だが、何かが前進した気がする。
それが進んでいい方向かは分からないが、確実に曜の居る方向には進んだ気はしてきたのだった。
その日は稽古の日だったから、学校帰りはジムに行く。
何時も通りの練習をこなしスパーをする。
少し早紀ちゃんが視界に入り気になってしまったが、いい練習は出来たと思う。
「最近のスパーはいいなぁ・・・見違えるぐらいだ」
靖さんが練習終わりに笑顔になる。
「そうスか?」
「ああ、いい意味で荒々しさが出てきた・・・傑は天才型の優等生だってイメージだったけど、それは格闘家としていい事ばかりじゃないのさ」
天才型の優等生も相当褒められてる。
と言うか、靖さんからアドバイスはあっても貶された事は無い。
「今までの俺は駄目だったんスか?」
「いや駄目じゃない、むしろプロで活躍出来るって確信できたさ・・・でも、怖さがなかった」
何となく言いたい事は分かる。
だけど自覚できない事だから、難しい話だ。
「この前の試合は傑に荒々しさが出て、セコンドから見ても怖さがあった・・・それが『化けたっ!』って思えてゾクゾクしたからな!」
嬉しそうにそう言う靖さん。
元プロである靖さんの評価は嬉しかった。
「あの時だけじゃなく、今も継続して怖さがあるからいい事だ・・・もうみんなスパー嫌がるぐらいだしな」
「えーっ・・・じゃあ、靖さんがずっと相手して下さいよ」
「勘弁しろよ!俺にも手に負えなくなってるんだからな!」
最後は冗談めかしてそう笑う靖さん。
そんな話をしてると、早紀ちゃんが近付いてくる。
「お疲れ様です!・・・ちょっと話があるので奥へ」
そう言われて早紀ちゃんに付いて行く俺。
ジムの奥と言うのは事務室で、会長が居たり、事務員してる会長の奥さんが居たりしている。
早紀ちゃんに付いて行くと、その事務室を通り越して更に奥・・・
滅多に人が立ち入らない倉庫的な場所に連れて行かれた。
そんな物が雑多に置かれた部屋に入ると、早紀ちゃんが扉の鍵を閉める。
部屋には会長の奥さん・・・
つまり、早紀ちゃんの母親の亜紀さんが居た。
それだけで嫌な予感がした。
微笑む2人の顔が何時もと違う気がする。
何と言うか表現できないが、2人を見て股間が疼いていた。
「鈴華さんから聞いたわ」
亜紀さんの言葉に嫌な予感が当たった事を確信した。
それを裏付けるように早紀ちゃんが近付いてきて俺を股間を撫でる。
「こっちのトレーニングを疎かにしてるって、瞳ちゃんも言ってたよ」
瞳と早紀ちゃんは親友同士・・・
そして木村と言うコーチに犯された者同士だ。
更に言うと、母さんと亜紀さんも同じだ。