つながり。 4
「今から友樹に晩御飯作るんだー♪」
ジェシカがパタパタ可愛らしくキッチンに向かって歩く。
その後姿を微笑ましく見守る。
『娘は少し賢過ぎるというか、今の生活が物足りなかったのかもしれません』
ジュリアさんの言葉を思い出す。
確かにジェシカはものすごく賢い。ジュリアさんとその旦那さん、つまりジェシカのお父さんの導きで通うことになった日本の学校も、相当な進学校だった。
(ジュリアさんにはああ言って託されたけど、俺にはどう考えても釣り合わないような美少女だよなぁ)
モニターの向こうでの交流の時から思っていたが、改めて感じてしまう。
今もなんというか、夢を見ているような気分だ。
「友樹〜!」
「あ、ああ、ごめん。俺なんかすることある?」
「友樹はご飯できるまで待ってて。あ、その間にお風呂入る?」
よくできる、俺にとっての幼妻だろうか。
その言葉に甘えて風呂に入るのもいいかもしれないが、できればジェシカと一緒に入りたい。
「いや、できるまで待ってるよ」
「もうちょっとかかるけど…」
「お風呂はジェシカと一緒に入りたいな」
「あ!そうだよね!私も友樹と一緒の方がいいかも。じゃあ、待っててね!」
大人びているところもあるけど、歳相応のところもあって可愛らしい。
ジェシカはキッチンでテキパキ手際よく夕食を作っている。
リビングでゆっくりくつろぎながらテレビをつけ、野球中継でも見ながら出来上がるのを待つ。
次第にいい匂いがこちらにも漂ってきた。
この1か月ジュリアさんに猛特訓されたのか、ジェシカのことだからもともと得意だったのか、どちらにしても素晴らしいことだと思う。
「友樹ぃ、できたよっ!」
「おお、ありがとうな」
鶏肉を香味で焼いたステーキに、冷ややっこと野菜の煮物。
10代半ばのジェシカが作ってくれるのは想像以上に手の込んだ本格的な料理だ。
しかも日本の味も時折ふんだんに使って。
「日本食も作れるんだな、ジェシカ」
「ママが教えてくれたの!」
さすがあの母親にしてこの娘、といったところだ。
ジェシカと2人で晩御飯。
いつもながら本当に美味しい。