幻影 2
「へぇぇそんなことがあるもんなんですね…でも“付き合っていた…”って、過去形なんですか?…」
小首を傾げる少女…
そんな風に見詰めてくるところも、ホント結衣に生き写しだ…
「あ、ああ…彼女とはもう…会うことが出来ないんだ…」
それまで笑顔を浮かべながらコーヒーを飲んでいた彼女の表情が変わる。
「そう、ですか」
その言葉だけで察してくれたようだった。
「その彼女さんと私、すごく似てるってわけですね」
「似てるというか、キミは彼女そのモノだって思うよ」
「偶然ってあるんですね」
普通なら僕をおかしい人認定するだろうが、この子は違った。
「でも、私は私なんです。こう見えて…」
「それはそうだ」
目の前の結衣も僕が知っている結衣と同じだった。時には大胆で、物怖じしない。体育会系や音楽をやってる一般に人気者の部類に入るキャラは好まず、それでいて遊び慣れておらず自分を女と意識してくれる相手を好む。そんな部分まで同じだ。
「よく顔と体のバランスが悪いとか、影で言われるんです。私の胸も好きですか?」
「もちろん、そのギャップもその…大きな胸も」
「大きい部類ですね。少なくともぺたんこじゃないです」
「グラマーな方が好きだ」
「その彼女さんの肩も揉んであげましたか?」
「当然さ、愛していた。胸も彼女の人となりも」
「なら童貞じゃないですね」
「ああ」
「じゃあ、今度デートしましょう。最後まで含めて」
結衣とは連絡先を交換して別れた。
17歳の高校2年生、結構家がお金持ちで、有名な私立校に通っているようだ。
出会ってから数日、まめに連絡したりやり取りを交わし、週末にデートの約束を取り付けた。
待ち合わせ場所は最初の出会いの場だったターミナル駅の大きな時計台の前。
温かく春らしい天気。
厚手のコートではなく薄いジャケットを羽織る。
目的の場所につくと、結衣もほどなくしてやってきた。
今日は長い髪でゆったりとしたワンピースで清楚な装いだ。
ウィッグまで使って印象さえ変えてしまう。
「今日はいろんなことを楽しませてください」
「ああ、僕が年上だしね」
「運命論って信じますか?」
「分からない、だがこうして恋に落ちたのは紛れもない事実」
「周りには知られたくないけど、いずれは恋バナのネタは欲しい。そう思ってたんです」