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ノーマンズランド開拓記
官能リレー小説 - その他

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ノーマンズランド開拓記 32

『ははあ!かしこまりましてございます。近日中に我が部族の選りすぐりの戦士達を派遣いたしまする。我らが力を合わせれば白い悪魔共など敵ではございません!ヤツラを地獄に送り返してやりましょう!』
『うむ、その意気や良し!…あぁ、それとな、世界の滅亡に関わる緊急時ゆえ、追加の貢ぎ物も徴収する事になった。合わせて納めよ』
『は…はあ…かしこまりました…』

伝える事だけ伝えると、戦士達は去って行った。
長老はその背に向かって毒づく。
『クソ…野蛮人共…今に見ておれ…あの“火を吹く筒”さえ手に入れれば、お前達など敵ではない…!』
『ちょ…長老…!』
村人達は心配そうに長老に訴える。
『本当にこんな事して大丈夫なのかね…?』
『そうだよ…両方に良い顔をして…もしバレたら俺達は皆殺しだ…』
『ばかもの!こういうのはな、上手く立ち回らねばいかんのじゃよ。良いか?あの白い連中が来た事で、これからこの地は大きく変わるぞ。勝ち馬に乗るためには、どっちにも尻尾を振っておく事じゃ。最後に笑うのはワシラじゃよ』
何という節操の無さであろう。
確かに処世術としては有効だが人間的には不誠実極まりない。
だが、彼らは知らなかった。
自分達の滅亡の時が、もうすぐそこまで迫っている事を…。

「…大尉殿!先住民の集落を発見いたしました!」
「そうか!ついにヤツラの巣を見つけたぞ!ウジ虫共め!一匹残らず駆除してやる!総員、集落を包囲せよ!」
「「「はっ!!」」」
…それはロレンツ大尉率いるアスファルティア陸軍海兵隊であった。
ロレンツの命令一下、無駄の無い動きで、集落を取り巻く銃兵達…。

…一体どうしてこうなったのかと言うと…話は数時間前に遡る…

独断で調査を開始したロレンツ達は、ルーク達とは違うルートで奥地を目指していた。
だが、そこで彼らは予想外の物に遭遇する。
『こ…これは…!?』
『村…の跡か…?』
それは破壊された集落の痕跡だった。
既に人がいなくなって数年が経過しているが、明らかにエルシオン大陸風の家屋の跡だった。
それはつまり、ルーク率いる開拓団より前に、この地に入植を試みた集団が存在していたという事を意味していた。
まず一行が疑問に思ったのが『この集落の住人達はどこへ消えたか?』であった。
『家の中を調べてみろ』
『はっ!』
半壊した家屋の中に足を踏み入れた兵士達は、そこで恐るべき物を目にした。
『うっ…ひでぇ…』
『マジかよ…』
中には複数の白骨死体が転がっていた。
入り口付近に大人の男性と思しき白骨が一体、奥に大人の女性と幼児と思しき白骨が抱き合ったまま倒れていた。
恐らくこの家の住人…夫婦と幼い子供だろう。
全ての家が同じような状況で、さらにショックな事に、全ての白骨死体の中から、矢や槍の先端部分に使われる石器が見つかった。
この状況から推測される答えは一つしか無い……この村は先住民の襲撃を受け、住人は虐殺されたという事だ。
『一体何があったんだ…この村に…』
一つの白骨を見下ろしながら呟くロレンツ。
女性らしきその白骨死体は股関に石槍を突き立てられて殺されていた。
尋常な殺し方ではない。
恨みとか敵意とか、そんな物を超えた狂気じみた物が感じられた。
目付役として同行していたレーニック海尉が答える。
『…考えられるとすれば…現地人とトラブった…ですかね…』
だが自信無さげだ。
当然である。
一体どんな風にトラブればこんな残酷な殺され方をされるというのだ。
そこへ、兵士の一人がボロボロに朽ちかけた本のような物を持って来た。
『大尉殿!こんな物を見付けました。どうやら日誌のようです』
『おぉ!これでこの村に何が起こったか解るな!』
『…ですが…アスファルティア語じゃないので読めないのですが…』
『私に見せてください!』
レーニックが日誌を受け取った。
『これは…カスティーリャ語です』
『すると…これはカスティーリャ王国の開拓団という訳か…読めるか海尉?』
『はい!』
カスティーリャ王国はアスファルティア王国と同じ海洋国家で、両国はライバル関係にある。
『…えぇと…日付は…今から十年ほど前のようですね…』
『良く残っていたな、その日誌…まあ良い、読んでくれ』
『はい…5月15日…』

 ※ ※ ※

5月15日

本日こそは記念すべき日である。
我がカスティーリャ王国開拓団(男女約20名)が祖国の栄光を背負い、ついに前人未到の地アルディアへの第一歩を踏みしめた日だからだ。
これからこの地を開拓し、我らが第二の故郷とするのである。
我々の前途は明るく、希望に満ち溢れている。
例えどのような困難が立ちはだかろうとも、必ずやり遂げて見せよう。


5月16日

驚くべき事だ。
このアルディアの地には既に暮らしている民がいたのである。
彼らは我々に対して攻撃を仕掛けて来た。
急な襲撃で多数の負傷者が出たが、何とか撃退した。
恐らく彼らは未知の人間である我々に対して警戒しているだけであろう。
このような形での初接触となったが、お互いのためにも今後は是非とも彼らとの関係の改善を図っていきたい。

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