優柔不断な恋心♀×♂♂ 9
これからの期待なのか?…やけに戯けてみせる雅志…
退院してからというもの、強士に対しても平気な顔して下ネタを振って来るようになった雅志…
それは雅志とは何でも話せる間柄になりたいと願っていた強士にとっては喜ぶべき事ではあるのだが、どこか釈然としないものを感じてしまう…
「まあ応援するよ…お前の記念すべき童貞卒業日ってことになるんだからな…」
叩かれた尻を掻きながら強士は精一杯に頬を上げる…
「はぁはぁ〜ん、俺に先を越されるのが面白くないって訳か…」
それはある意味間違ってはいなかった…
出来れば雅志には童貞のままでいて欲しい…そんな気持ちは確かにあった…
「バカ言え。俺がその気になれば何時だってオンナなんて抱けるさぁ」
強がってみせている訳じゃなかった…
ホテルに誘えば喜んで股を広げるだろう女子たちの顔は何人も浮かんだ…
ただ強士には…興味が無かった…
………………………
“それはそうだ”と,雅志は分かってはいた…
医者から宣告を受けてから今日まで、エロ動画に時間を費やし、時には趣向違いの分野にまで脚を踏み入れていた…
それでも…
雅志の男としての象徴はいくら刺激を与えてもピクリとも反応することは無かったのだ…
それでも…
雅志は現実の女の裸を目の前にしたら…と、希望に縋るしか無かった…
それでも…
雅志の抱いた僅かなる希望も、木っ端みじんと砕け散ったのだ…
………………………………………
オレンジ色に染まるグランドでは、健全にボールを追い回すサッカー部員たち…
音楽室からは吹奏楽部が奏でるボレロの大曲が響いていた…
リカは屋上のフェンスに靠れ、昨夜のことをぼんやりと思い出していた…
雅志の告白は、女のリカにとっては現実味を帯びない戯言…
それでもそうであってくれたら…と、そう願はずにはいられなかった…
「よぉっリカ!…浮かない顔してどうしたんだよ?…」
夕日を背に受けて現れる強士‥
リカは慌てて笑顔を作った…
「別にそんな顔しているつもりはないけど…」
頬が強張り、逆に膨れ面を強士に向ける。
「やっぱ良くはなかったのか?…まあ大目に見てやれってくれよ、雅志だって初めてだったんだからな;」
何も知らない強士がニヤケ顔をするのも無理はない…
「やだぁ;、聞いたの?…」
雅志と強士の仲良だ…黙っている訳はないか;…
「ああ、朝から雅志のやつ…凄いご機嫌だったぜぇ」
「そ、そう‥」
そうやって雅志は、辛い気持ちを隠して今まで私たちに笑顔を作ってきたんだと思うと‥胸が締め付けられる…
「何だよリカ…リカだって望んでそうなったんだろ?…」
そうね…その筈だった…
「もおぉ強士はデリカシーが無いんだから…:女には女なりに考えるとこもある訳よ…」
だからと言って雅志と別れるつもりはない…
いくらこの先、一生雅志とはデキなくたって‥それはそれだから…
「女か…」
校庭を見下ろしながらポツリと言う強士…
『ん?…どうかしたの?」
「あ;いや、ただ雅志も男になっちまったんだと思ってな…」
「何で強士が肩落とす訳ぇ?…親友に先を越されたことがそんながショックなの?…」
「ば、馬鹿かお前は;…ホント、デリカシーの無い奴だよ;…」
そのやり取りから数日後、雅志の元に学者風の男が訪ねてきた。
何らかの方法で記録されていたらしく、視聴覚室でAVを鑑賞していた男子は全員呼び出された。
当然ではあるが、強士も含まれる。
あの日雅志が脊柱を負傷した事について話があるらしかった。
「なにか治療法が見つかったのだろうか」
強士はなんとなく察した。
病院のような場所でシャワーを浴びて体を消毒する。
浴び終わると自動で通路が開いた。そこに迎えということらしく、他の扉は開かなくなっていた。
「おいおい、服もタオルも無いのかよ…」
先を歩く男子生徒の一人が嫌そうに騒ぎだした。
「さっきの服を着たら消毒した意味がないだろう」
それを誰かが反論する。
雅志と強士達は股間を隠しながら突き当たりの部屋に入った。