性欲乱れしアイドル道 1
繁華街の地下にある、飲食店だったフロアを改造して作られたライブハウス。
真っ暗だった室内に明かりが灯る。
「いよいよね」
小さなステージと、30人ほどが入ったら満員になりそうな観客用座席エリア。
そんなフロアを見ながら、ライブハウス支配人の彼女―河北あや―は感慨深そうにため息をついた。
ここは、かつて自分も歌って踊ったステージ、聖地。
「桃色メモリーズ、再始動ね」
地下アイドル「桃色メモリーズ」。
小さなこのライブハウスからスタートしたグループは、地道に人気を集め、テレビ番組にも出たりメンバーがグラビア活動をしたりしていよいよ全国区も…と目論んだ矢先、様々な問題が噴出し、一度は解散していた。
7年前、河北あやは「桃色メモリーズ」のリーダーだった。
メジャーデビューを迎えた前日、晴れやかな気持ちだったあやは、グループ運営から言い渡された「強制活動休止」命令に、どん底に突き落とされた気分だった。
理由は、メンバーの度重なる規律違反。
あやとともに「桃色メモリーズ」の中心メンバーとしてグループを引っ張っていた人物の、ファンとの個人的交流。明らかに度の過ぎた「交流」動画の流出。さらには未成年飲酒や喫煙の発覚。
目の前で夢、目標を失ったグループは真っ二つに分解した。
「アンタたちのせいで桃色メモリーズは台無しよ!!なんてことしてくれたのよ!」
「そっちこそ、他にばらしたのはアンタたちでしょ」
「なっ…」
あやともう一人の中心人物との大ゲンカを発端にグループは活動休止。
さらに、あやに味方していたメンバーが対立側のメンバー推しだったファンに襲われ大怪我を負ったことから「桃色メモリーズ」はグループ解散に追い込まれたのだった。
表向きの解散理由は、襲撃事件や、スキャンダルに便乗する形で同時に起きていたメンバーへの脅迫事件−−これも別の犯人たちが後日逮捕された−−からメンバーを守るためだったし運営もそのために心を鬼にした面もあったのだが、夢を前にして自壊した無念は、河北あやとその仲間達の中に残った。
ようやく、新たなステージが始まる……
往時のメンバーの中から、信頼出来て再起を誓う娘や、新たに募集した娘で、どうにか10名ほどを揃えた。
ステージ上では、センターの娘がファンに語り掛けていた。
「わたしたち、桃色メモリーズの、最初のステージに来てくれてみんなありがとうございます!
わたしたちみんな、あの悲しい事件の後もこうして集まってくれた皆様のために、歌います!」
軽快なメロディーが流れ、10人ほどでは手狭なステージで再興した『桃色メモリーズ』のメンバーたちは躍動する。集まったファンたちも温かい声援と拍手で彼女たちを後押しした。
河北あやは観客席の後方で覗き込むように後輩たちのステージを見守っていた。
一度失われた夢が戻ってきた。
誰も見てない今なら、泣いたっていい。
「復活したんだ。よく諦めなかったわね、あや」
「………!?……紗理奈!?」
あやが声の方を振り向くと、車椅子姿のかつての仲間がいた。