初体験はお姉ちゃんそして…… 108
「沙耶、財布は?弁当は?」
「お兄ちゃんもう行くの〜?いつもお兄ちゃんが登校する時間じゃん。」
「早い分には困らないからね。行くぞ。」
「行ってきま〜す。」
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
駅について回数券を買う。
「11枚あるか?」
「大丈夫だよ〜。」
「お釣り取った?」
「お兄ちゃ〜んそんなに心配しなくても〜大丈夫だよ〜。」
ついつい沙耶だと子ども扱いしてしまう。
「お兄ちゃん3駅目で〜電車一本見送るね〜。」
「待ち合わせか?」
「うん。」
「じゃあ僕は先に……」
「一緒に降りて〜。」
「迷わないだろ。それに冷やかされるぞ。」
「電車の中でパート教えるから〜。」
「分かったよ。」
「園田優輝ちゃん、ピッコロ〜。野田芽衣ちゃん、フルート〜。坂田真奈ちゃんは〜アルトサックスで〜、幸田愛ちゃんはコロネットを〜……」
「沙耶、ストップ。いっぺんに言われても覚えられない。」
「あ〜そっか〜。」
「今日は中学生もいっぱい来てるわね。」
「すみません。妹がいっぱい連れてきてしまいまして。」
「いいわ。ちょっと11時から合奏しましょう。」
「じゃあ僕はパートの中で合わせる練習に付き合います。」
新たなメンバーが入ると同じパート内でも息が合わない。一種類の楽器から2種類、3種類と増やして合わせ、木管、金管で合わせる。それだけで11時になった。
「合わせるわよ〜。」
僕は指揮台に上がった。
「こっち向いてください。」
全員が用意を終え、顔を上げた。
「では頭から行きます。練習番号Cまで目標にします。少しスローテンポで。ワンッ、ツーッ、スリーッ、フォーッ。」
パラパパパパ〜
プーパパララ〜ピポパ〜パ、パ〜
カンカンキンコンカン リラル〜
ポンポーピパポー ポコポン
「はい。とてもいいと思います。途中でグダグダになることもなく辿り着きました。ではこの調子で次に行きましょう。」
タタタタァラッタタ パパパプ〜パパパ
キンカンコッコッコココ ピポポポピポポポ
リ〜ラル〜ラリ〜ラ〜ル〜
「ちょっと止めて下さい。前に前に突っ込んで行き過ぎますね。ちょっと落ち着いてください。特にシロフォン。」
「は〜い。」
「じゃあもう一回さっきのところからお願いします。」
タタタタァラッタタ パパパプ〜パパバビャァ〜!!
「あ〜リードミスです〜。」
「全く……あ!!」
「あ〜アイツ中学生相手にムキになってる〜。」
「沙耶ちゃんが泣いちゃうわよ〜。」
沙耶にいつものつもりで文句を言いかけてしまった。