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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 89

「僕にはやることがあるから。君が刺してもいいよ」
紅夜叉は「うぅ」と呻くと何も言えなくなった。
炬悧『鵺』くらいの大物になると寝首をかくのも容易ではなかったりする。
人間の様に首を刎ねれば絶命するやつもいるが、首と胴が分かれても別々に行動してくる奴もいる。
誰かのサポートなしに止めを刺すのは無謀と判断して狂骨の後を追った。
狂骨は一旦ロビーに出て案内板を見て裏庭を目指した。
その間に右往左往する従業員を見かけたが、誰も紅夜叉達を気にする余裕がなかった。
裏庭は池を中心にした小広い日本庭園風の造りになっている。
狂骨は池の周りに点在する岩をコンコンと叩きながら庭を回る。
そして庭の隅に置かれたひと抱え程の岩を見つける。
それには赤い布がかけられ腰掛けにされていた。
赤い布を剥がし、何やら口の中で短い呪文を唱えると岩を掌で叩いた。
すると岩は割れ、岩の大きさを無視した体長2メートル近くの怪鳥が中から飛び出した。
猛禽類の鳥の体に人間の頭。
顔は美少女を思わせるが鋸の様な歯が覗く嘴と、文房具のハサミで出鱈目に刈り込まれたようなザン切り頭で台無しになっていた。
「呪授!会いたかったよ!」
狂骨は以津真天に向かって腕を広げると以津真天は翼を広げ狂骨に向かって飛ぶ。
狂骨が以津真天を抱きしめようと腕を閉じるが空を切った。
「あれ?」と抱きしめるはずだった以津真天を探すと頭上から羽ばたく音が聞こえて見上げると巨大な鈎爪が狂骨の顔を掴んだ。

以津真天は「いつまで放っておくか〜!!」と開口一番、そう叫ぶと掴んでいる狂骨の頭を削岩機の勢いで嘴でつついた。
辺りに白い欠片た飛び散る。
「ははは、ごめんごめん。これでも急いでたんだぞ。」
以津真天こと呪授の攻撃は甘噛み程度にしか感じていないように、狂骨は「よしよし」と鷲掴みにしている足を撫でた。
少しは気が晴れたのか以津真天は地に立ち、翼を納めた。
「紹介するよ。呪授。僕の可愛い小鳥ちゃんだ。」
「ど、どうも」
我ながら間抜けな返事をしたと思い、紅夜叉は慌てて自分の名を告げると呪授は横に広く鋭い嘴の端をニヤリと上げる。
『小鳥ちゃん』と言うには身長2メートル近くある呪授の視線を合わせるには小柄な紅夜叉は見上げるしかなかった。

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