幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 80
「まぁなんだ……新生茨木軍なんての作ったはいいが、なかなか人数が集まらなくてな」
しかし、炬俐は本当のことを言わず、適当な説明を狂骨にする。
「ふぅん…でも人数足りないなら、何で俺を誘わないわけ?」
「誘ったら入るのか?」
「やだ、面倒だし」
「……だろうが」
「なぁ」
そうやって話し込んでいる炬俐と狂骨に、少年が声をかける。
「ちょっとトイレ行ってくる」
「いってらっしゃ〜い」
「待て、勝手に!」
「まぁまぁ、向こうで契約金の話でもしようじゃないか」
「おまっ!? 契約金って!」
そうこうしている内に、少年はボーイに場所を聞き、トイレの方へと消えていった。
「ふぅ……」
幾つか角を曲がって、炬俐達の声が聞こえないところまで来ると、少年……の格好をした紅夜叉は一息ついた。
「さてと……白面は何処だ?」
―――その頃・ホテル近くに停められたミニバン内―――
「拙い…拙すぎる………」
阿蘇が頭を抱え、下を向いてブツブツと呟いている。
車内には他にも蛮悟と、八侘を含めた数人の娼婦達が眠りこけていた。
さらに、あちこちに散らばるビールの空き缶やつまみの袋………
セルジュの店で武器の調達をした後、赤千穂は留守にして心配だからと、一旦神社に戻っていった。
そして阿蘇達はホテルの近くの森の中に車を停め、いつでもホテルに突入できるように準備をしていた。
しかし、娼婦の一人が『喉が渇いたから』と、ビールを買ってきたのが拙かった………
今酒は拙いだろと思ってはいたが、その娼婦に続いて蛮悟が『俺にも一本』と手を伸ばし、美味そうに飲むのを見て『一本ぐらいなら…』と阿蘇や他の娼婦達もビールに手を伸ばし始め………
そして、いつの間にやらドンチャン騒ぎ。
そして気が付けば、『ちょっと狂骨と一緒に偵察行ってくる』と書かれたメモを残し、紅夜叉と狂骨の姿が消えていた。
「全員………全員起きろーーーーっ!!!」
車内に阿蘇の怒声が響き渡った。
―――ホテル一階・警備員室―――
警備員室と書かれたプレートの付いたドアを見つけ、紅夜叉はそっと中を覗いてみた。
正面の壁には、ホテル内に無数に取り付けられた監視カメラのモニターがある。
そして、その内一つのモニターをニヤついた顔で見ながら、椅子に座っている警備員の姿があった。
「んっ、誰だっ!」
警備員が紅夜叉の気配に気づき、端の方にある幾つかのモニターのスイッチを慌てて切った。
(何であそこのモニターだけ消すんだ?
怪しいな……調べてみる必要があるな)