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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 78

信じられないことではあった。加工の難しい金属なのだ。このように繊維状にしてより合わせ、綱にする技術など、今まで聞いたこともない。
そして、黒鉄よりもいかなる宝石よりも価値ある鉱物だ。これほど多量に使われる例も、彼には覚えがなかった。

「真銀索の吊り橋、なのか…」
リオンは思わず、感嘆の声を漏らした。

単純な構造だった。
数本の金属索を渡し、そこに薄い石板を張りめぐらせているだけだ。木と縄の吊り橋と、何も変わらない。
理想の、と形容される金属…あらゆる方向の応力に耐え、環境、経年による劣化もない…真銀が、この高度でのこの規模の、橋の存在を可能にしていた。
見かけはただの石橋だ。
だが世界中どこへ行っても、これほど高価な、美しい橋は他にないだろう。

…ラッキーだった。
リオンは、はからずもそう思っている自分に気づいた。
状況は全く良くなっていない。むしろ最悪に向かって橋を渡っているわけだが…こんなものを見ることができたのだ。




感慨にふけっているうちに、白亜の塔にたどりついた。

巨大な円筒状の階層建築には、塔という呼び名はつくづくふさわしくない。
あちらの塔と違って外部に開いた回廊はなく、開口部は無数の窓と、橋の入り口、その真下にある竜の離着陸デッキだけだ。
だが内側は、だだっ広いある種の開放空間だった。
竜の巣の階層より上が、吹き抜けになっているのだ。
壁側に回廊と無数の扉があり、吹き抜けの中心に太い一本の柱が立っている。柱は壁に接しておらず、塔を支えるためのものではないようだ。
彼らは回廊から柱に伸びた渡廊を渡った。

柱は中空の構造で、内部を昇降機が行き来していた。

塔の最上階に首長はいる、とエディットは言ったが、昇降機が止まったのはその手前の階だった。
吹き抜けではなく床と天井があり、放射状にかなり広く部屋が取られている。
エディットは一室の扉を叩いた。


円形に区切られた部屋は、鍛錬場のようだ。
あらゆる武器が壁に設置され、黒鉄の、男物らしい全身鎧がまばらに立ち並んでいる。

中心にノエミがたたずんでいた。
装いは女官のドレスだが、あの巨大なバルディッシュを手にしている。
エディットがひざまずく。

「候補者を連れて参りました」
「ご苦労でした。お前たちはもうよい、お下がりなさい」
ノエミは軽く頷くと、部下たちを下がらせる。
檻に入ったままのリオンと彼女の、二人だけが残された。
「首長のお支度が整うまで、しばらくここで待ちなさい」
そっけない言葉と同時に、彼女はふいと顔をそらした。

ゴウ、と風音をたててバルディッシュが閃いた。
だが振り下ろした斧は床に叩きつけられる前にぴたりと止まり、次の動作が始まる。

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