幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 77
一月ほど前、白面と同じようにして此処へきた彼女達は、炬俐の紹介で街の名士達の相手をすることになった。
問題はその名士達の性癖である。
白面に話をしている彼女の場合は、部屋に入ってベッドに横になった途端、いきなり相手の男に顔面を何発も殴りつけられた。
SMプレイなどというものではない。
男は職場や家庭での不満を吐きながら、殴り続け女を犯した。
ことが済み、男と入れ違いに入ってきた炬俐はニヤニヤしながらこう言った。
『困ったもんだ。世の中にはこんな形でしかストレスを発散できない人間が増えてきた。
特に偉くなればなるほどにな………』
それ以来彼女達は逃げだすこともできず、毎日のように人間達の鬱憤晴らしの為の人形をやらされる破目になったのであった………
「アタシはまだいいよ。他の子なんて、妖怪だから簡単に死なないけど火傷させられたり刺されたり…」
最後は人間にされた仕打ちを思い出し震えて声にならなかった。
「酷すぎる…」
白面は動ける範囲で調べる限りに死んでいる人(妖怪)はいなかった。
「生きてはいるけど、早く手当てしないと………あっ、そうだっ!」
何かを思い出し、女に尋ねる。
「あなた達を連れ戻しに菊名って人が来たはずだけど、会わなかった?」
「えっ、姐さんが此処にっ?! 本当なのっ!?」
女が驚いた顔で白面に詰め寄る。
「その様子だと此処には来てないみたいね。それじゃ何処に………」
―――その頃・地下の別の部屋では―――
菊名の正体は三千年以上生きた猫又である。
五凶には劣るものの、茨木軍の中ではかなりの力を持った妖怪として知られていた。
黒服の男も、菊名の実力は知っていた。
その菊名を炬俐は『始末しろ』と簡単に言ったが、男にそんな力は無い。
そこで男は一計を案じた。
菊名を‘あれ’のいる部屋に連れて行こうと………
「ん……はぁっ……もう止め………」
今その部屋では、二人の女が、裸で絡み合っていた。
一人は菊名で、もう一人は25,6歳ぐらいの色白の美女である。
部屋には他にも、白面と一緒のミニバスでやっていた猿達。
それに炬俐と黒服の姿があった。