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おてんば姫、ファニーの冒険
官能リレー小説 - ファンタジー系

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おてんば姫、ファニーの冒険 69

「側用人?」
「秘書と言った方がよろしいでしょうか、言ってみれば雑用係ですな」
そう卑下するわりにはこの男には卑屈なところがまったくない。
だからといって威風堂々とした存在感があるわけではない。
まるで影法師のような男だ。
(まずいわね)
この辺りは宮殿の奥であり、衛兵の数も少ない。
またファニーも寸鉄も身につけておらず、ミネルバも自分部屋に置いてある。
ファニーの警戒する様子を見て、ダス・ライヒは両手を挙げて敵意がないことを示す。
「ご安心を、今日は戦いに来たのではありません」
「じゃ、何の用かしら」
戦う気はないと言われても、それでも警戒を解く気はなかった。
「なに姫様の婚約者であられるステファン公子のことでございます。公子は今大魔王グリンデ様の所へ向かっておられます。無論この国からお連れしたご婦人達もご一緒ですよ」
「何ですって、それは本当なの」
「無論、これが証拠の品でございます」
いつの間にかファニーの足下に杖が転がっていた。
それは魔術師が使う物で、タフト公家の紋章が彫り込まれていた。
「これは」
「こちらはステファン公子がご愛用になっている杖です。お手にとってご覧ください」
そう言われて手に取るほどファニーもバカではない。
このダス・ライヒという男が油断できないことは、フォレントの武器屋で身にしみている。
「今、タッハー伯がこちらにおられるとか、タッハー伯ならおわかりになるかと」
確かにタッハー伯爵ならわかるはずだ。

「それじゃあなた達がステファン公子を誘拐したのね」
「誘拐など人聞きの悪い、ただご招待しただけのことです」
「それが誘拐だっていうのよ、あなた達の要求は何、ステファン公子をさらってどうしようというの」
「要求など何も、ただ我が主がステファン公子にいたく興味を引かれているので、エスカルドの宮殿へお連れするだけのことです」

要するにステファン公子を人質として監禁しようというのだ。
「そんなことさせないわ、あなた達の好きにさせない」
「ほう、さすがに勇ましいですな。それならどういたしますか」
「もちろん、戦ってとりもどすのにきまっているじゃない」
キッとまなじりをあげてダス・ライヒをにらみつける。
「ハハ、そうですか力で奪い返しますか。さすがに武勇の国の姫君であられる。てっきり新しいのができて、もう古いのはいらないとおもいました」
(この男、さっきの話を盗み聞きしたのね)
「ではお待ちしております。できればファニー様にもエスカルドへいらしていただけるとありがたいのですが」

そう言うと、ダス・ライヒは霞のように消えていった。

ダス・ライヒが消え去ったあと、ファニーは急いで城の警備を固め、捜索隊を城内に走らせた。
杖は徹底的に調べられた後、タッハー伯爵に手渡された。
タッハー伯はこれがステファン公子の杖である事を断言した。
ここにいたって、ためらっている暇は無いとヘンドリック王は決断、ドーリス王国からの返事は待たず、メメール山脈にある魔王軍の砦を強襲した。
しかし、一足違いに魔王軍は砦を引き払ってしまっていた。
獣人の報告によると、ドーリスへと逃げ込んだと言うのだ。
閣議の間に沈痛な空気が流れていた。
ステファン公子の行方が、また判らなくなってしまったのだ。
「ドーリス王、エドモンド5世のやつはなんて言ってるんだ」
「それが何も申しませぬ、それどころか大使の謁見すら断っております」
外務大臣も今度のドーリス側の態度にはとまどっていた。
いくら長年の敵対国とはいえ、こちら側の大使の謁見を断るなど前代未聞だ。
まして魔王軍に協力するなど考えられないことだった。
軍務大臣が挙手をして発言を求める。
「陛下、直ぐにでも追撃の部隊だすべきです。このまま座して待てば国の威信に関わります」
「だが軍を派遣すると、戦争になるぞ」
「派遣するのは少数の精鋭のみ、冒険者に偽装すればドーリスに気づかれることはありません」
「だが、誰を出す」
そのとき黙ったまま会議の行方を眺めていた、ファニーが口を開いた。
「その役目、わたくしにお任せください」

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