幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 57
念の為に他に何かないか、バッグをまさぐってみる。
「………!?これはっ」
そこで紅夜叉は紐の付いた白い布を見つけた。
急ぎ八侘に声をかける。
「おいっ、褌が入ってるぞっ!」
「えぇ、それも好きなお客さんが」
「これ借りるからな」
「穿くの?!」
衝立の横から、紅夜叉がニューと顔を出す。
「褌は穿くんじゃなくて、締めるもんだ」
「いえ、そんなこと聞いてないし……」
バッグに入っていたのは『もっこ褌』と言われる、前垂れのない紐パンに似た形状の褌であった。
短パンとパンティを脱ぎ、もっこ褌を締めると胸を張って大きく息をつく。
「やっぱ、日本人だったら褌だよな」
「………そうね」
(『アナル専門褌少女』で売り出したら人気でるかも……)
頬杖をつき、八侘はそんなことを考えていた。
「まぁ着替えながらでいいから、話を聞いててね」
悠長にはしていられないからと、八侘達は今までの時点で得られた情報を話し始めた。
今まで集めた情報によると、白面と姐さんを乗せたと目されている黒のミニバスは、高級ホテル『夜鳥』に入っていたらしい。
現在、ホテルの前には仲間の娼婦が二人見張りについている。
このホテルの利用者には、いわゆる上流階級と呼ばれる人間達がほとんどである。
オーナーは若い男性で、ホテルの最上階に住んでいるという話だが、滅多に人前に姿を見せないそうだ。
「んじゃ、早速行こうか」
着替え終わった紅夜叉が、衝立の後ろから出てくる。
こっちの方が動きやすいと判断し、ランニングとオーバーニーを脱いで、Tシャツと短パンという身軽な服装になっていた。
「駄目よ。私達みたいなのが行っても門前払いよ」
紅夜叉の言葉に八侘が待ったをかける。
「んじゃどうすんだよ」
「待つのよ」
「待つ?」
「きっと姐さんから連絡があるわ。それまでホテルの周りを囲んで待つの」
八侘f自分の携帯を見つめながら答える。
「でもその前に………」
顔を上げ、フフッと笑いながら一同を見渡す。
「ちょっと寄り道して、武器の調達をするわよ」
―――南区・甘味処『味楽林』―――
八侘が先刻の客にサービスして聞き出した情報によると、この甘味屋の主人が裏で武器の密売をしているらしかった。
和風の外観をした建物の裏に周り、八侘が裏口の戸を叩く。
『はい、どなた?』
中から女性の声で返事が返ってくる。
「『ちわーすっ、三河屋です。ご注文のサッカリン1キロお届けにあがりました』」
そこで八侘が客から聞いた合言葉を言う。
本来ならここでドアが開き、店の中に入れるのだが………
『あら? この店、甘味料にそんなの使ってたの?』