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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 43

 ビシッ!
「イデーッ!」
 尻を撫で回す狂骨の手を、赤千穂が指で弾く。
 普通に弾いたのではなく、霊力を籠めて弾いたため、手首から先が吹き飛んでしまった。
「さすがに無罪放免とはいかないから、当分は監視をつけさせてもらいますね………あなたの好きな阿蘇さんを」
「げっ!」
 手を再生させながら、『薮蛇だった』と狂骨は後悔した。
 
「ところで“しっぺい太郎”さん」
 ビクッ!
 今がチャンスとばかりに、こっそり逃げ出そうとしていた太郎を赤千穂が呼び止める」
「はっはいっ!何の用でござっしゃりましょうかっ!」
 慌てて振り向く太郎。
「実はこれから人探しをするんですけど、是非お手伝いをお願いしたいの。
 いいですわよね、玄安殿」
「拙僧は構いませんぞ」
 玄安と赤千穂が太郎の方を向く。
「いいですわよね“しっぺい太郎”さん」
「………はい」
 
 もし断ったらどうなるか―――
 
 それを考えると、太郎に断る勇気はなかった。
 
召喚主であるアリスより力は弱いかもしれない。しかし瞬殺されるくらいの差があることは確実に分かった。下手をしたら死なない程度にいちびられ続けられるだろう。
珠美は太郎と離れるのを嫌がったが玄安に宥められ、珠美と太郎との間の強制力が一時的に弱くなった。
アリスが“召還”しなかったことを呪いながら赤千穂の後を付いて歩く太郎の尻尾は力なく垂れていた。
門を潜るまではまるで処刑台に上る気持ちだった。
やがて小さな通りから大通りへと抜けた頃には太郎の中に“?”が浮かびだす。
(どこに向かっている?)
大型犬より大きい狼の姿で大通りを歩く姿は人目をひきつける。中には小さな子供が「おっきなイヌさんだぁ!」と、親の手を振り解いて駆け寄ってきては赤千穂にお母さんから離れちゃ駄目よと窘められた。(それでも太郎のことを撫でて行った)
やがて一向は駅前へと着いた
 
―――東区・竜木駅前―――
 
「ところで赤千穂様」
 太郎が他の人間に聞こえないよう、小声で赤千穂に尋ねる。
 力量の差を知り、いつの間にか‘様’付けである。
「なーに? しーちゃん」
「しーちゃん!?」
 赤千穂まで、太郎のことをしーちゃんと呼び始めていた。
「いや、もうどうでもいいけど………ところでこれから電車に乗るんで?」
「いいえ、車を呼んでるからココでしばらく待つの」
「しばらく待つって……俺たち相当目立ってるんだけど」

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