群れなして蠢く美しき屍 41
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「誠さま。荷物の積み込みはこんなものでよろしいでしょうか?」
「・・・ん。こんなもんだろ。ご苦労様」
いつのまにか5人のリーダーになったらしい弥生の言葉に、誠は軽く答えた。
朝の濃厚な1発をもらった弥生たちは、誠の指示で車に食料やその他使えそうな品々を積み込んだところであった。
何しろこれから誠たちはどこにいるのかもわからない、生き残りを探す旅に出るのだ。
食料や生活必需品はどれだけあっても足りないということはない。
いつまでこんな気軽に入手できるかもわからないのだから。
誠はこれからどこに行けばいいのか、思案にふけっていると。
弥生が何やらモジモジしながらこちらの様子をうかがっていることに気が付いた。
いや、彼女だけではない。振り返ればそこには仕事を終えた4人が同じように物欲しそうな視線を誠に向けている。
その態度に彼女らの求めているものを理解した誠は、思わずため息をついた。
「わかったわかった。褒美をくれてやる。横一列に並んで待ってろ」
「・・・・・・!」×5
その言葉に5人の顔が一気に明るくなる。
誠の言われるがままに並んだ一同に、誠はキスしたり胸を数回もんだり、秘裂を軽くいじったりして5人をねぎらってやる。
美樹たちはたったそれだけのことでもうれしそうに身をよじり、誠への忠誠を新たにするのだった。
結果として自分の言うことを聞く駒を5つも手に入れた誠であったが、指示を飛ばすたびに来るこの『おねだり』を疎ましく思っていた。
誠だって健全な青少年である以上、女をはべらしたいという思いがないわけではない。
しかし実際に侍らせてみるとこれがまた面倒くさい。
女たちはスキあらば主人である誠にかわいがってもらおうと、いつもベタベタしてきてうっとうしいのだ。
ベタベタされてうれしいと思っていられたのは最初だけ。慣れてしまえばただの邪魔でしかないのだ。
誠は理想が実現することが必ずしも幸福なことではないということを身をもって理解していた。
とは言え、このおかしくなった世界で生きていくのに彼女らの力が必要なのもまた事実。
誠はそれも運命とあきらめ、これからどこに行くかコンビニで手に入れた地図を開いた。
安全を求めるならば、やはり人里から離れるのが1番いいだろう。
この騒ぎは周囲の人間が次々とおかしくなったことから始まったことだ。
人間のいない場所なら確実な安全を手にすることができる。
しかしそれでは誠は我が身に起きた異変を知ることができない。
弥生たちの変化を見る限り、異変を無視して毎日を過ごすことはできない。
誠と同じように女に襲われてなお生きている男を会って回って調べなければ、誠に未来はない。
ならば多少の危険を冒してでも人のいる場所へと向かわなければならない。
その条件ならば人通りの激しいエリアに行けばいいが、それだと今度は自分の命が危ない。
自分の安全を維持できるくらいの危険エリアを選ばなければならない。
誠は地図とにらみ合うこと数分。彼はようやくその目的地を決めた。
「―――よし。まずは学校を回ってオレ以外の生き残りがいないか調べるぞ」
「ということは・・・またあの学校に戻るんですか?」
「・・・いや、あそこから脱出するときオレ以外の男はみかけなかった。
たぶん全滅してる可能性が高い。それより別の学校を見て回ったほうがいいだろう」
誠はもっともらしいことを言っていたが。
本当はあの学校に戻りたくないのが本音であった。
あの学校には知り合いばかりで友達と呼べる連中は誰もいなかったものの、やはり顔見知りの死体を見るような事態は避けたかった。
それに昇降口で見た、肉風船となった男子生徒がどうなってるのかなど知りたくもない。
もしここにいる宮崎(仮)みたいに、中から女の子が出てきたりするのを目の当たりになんかしたら・・・。
考えただけでもゾッとする。
そこまで考えて、誠は青髪の少女を出会ってからずっと宮崎(仮)と呼んでいること、白髪黒髪にいたっては名前すらないことに気が付いた。