淫屍の迷宮 5
それを使えば100%の確率で助かったのに、うっかり忘れてしまうとは・・・。
人間、いざというときには何もできなくなるものだと、今さらになって実感できた。
しかし反省すべき点もあったが、そのおかげで得られたものもあった。
それは新型ゾンビたちの驚くべき知能の高さ。
コイツらは下級であるにも関わらず、言葉を理解することができるのだ。
おまけに人間らしい感情の類まで持っている。
推測だが、一度アンデッドスライムで改造された身体をもう1度改造されたことで、生き物らしさを出すことができるようになったのかもしれない。
まずは精密な調査が必要だ。
腹上死しかけたお返しもかねて、いろいろ調べさせてもらうとしよう。
こうして俺のダンジョンは美女ゾンビの徘徊する以前のダンジョンに戻ることになった。
冒険者たちはお宝(美女ゾンビ)を求めて俺のダンジョンに侵入し。
配置されたスケルトンやグールなどの撃退用アンデッドがこれを倒し、死体を生産する。
犠牲者が増えてくると、そのうちゴースト系のモンスターが発生するするようになり。
シャレと皮肉を効かせて、性と死のダンジョン『淫屍の迷宮』と呼ばれるようになる頃。
暴走気味だった母乳ゾンビと新型ゾンビの研究がようやく終わりを迎えようとしていた。
取り敢えずは、母乳ゾンビおよひ新型ゾンビ(便宜上、二段変化ゾンビと命名)から「永続飢餓感」を
取り除き、満足感という歯止めをつける。
こうしておかないと、母乳ゾンビはまだしも二段変化ゾンビは危険すぎる。
テストの為に二段変化ゾンビを初めて抱いた時には、ゾンビはもとより俺まで歯止めが聞かなくなり、インテリジェンススペルブックのアドが止めてくれるまでの8日間、ただひたすらに快楽を貪り合う羽目になってしまった。
腹上死なんて終わりなんかくれない、永遠の快楽地獄に危うくはまるところだった。
何しろ彼女らの母乳ときたら、完全食であるだけでなく完全回復薬でもあり、挙げ句の果てには死亡直後の相手を蘇生させる蘇生薬でもあったのだ。
つまり、快楽地獄に耐えきれず命を落とした相手すら、死の眠りから叩き起こしてなおセックスを強要する徹底的にもほどがあるほどに男を犯す為の女体として完成されていたのだ。
しかも獲物となる男の性欲と精力さえも、唾液によって常に補給されるという徹底ぶりである。
さすがにこれは、ひとます満足するというゴールがないとヤバすぎる。
ちなみに、インテリジェンススペルブックとは単独行動型インテリジェンスウエポンの一種で、無機質系の魔物の中では珍しく、頭脳労働に向いた種族だ。
アドは俺がダンジョンマスターをするに当たってアドバイザーが必要だと考えて、一番始めに作成した魔物だ。
最初の魔物としてはいささか高等過ぎたせいで、始めの頃のダンジョン運営がカツカツだったのは、今では良い思い出だ。
とはいえ、アドのサポートにはお世話になりっぱなしなので、いのいちばんにアドを作成した選択を後悔した覚えはない。
今回も快楽地獄から引っ張り出してくれたし。
なお、カツカツだったダンジョン運営は、最下級アンデッドのアンデッドウォート(ただ生えているだけの雑草のアンデッド)を大量に詰め込んだ部屋を用意して、そこから障気を収集してダンジョンコアの魔力に変換することで解決できた。
障気から得られる魔力は負属性の穢れた魔力で、用途が死霊系統か属性不問系統に限られているのだが、ともあれ魔力の安定供給手段を入手できたのは大きく、このシステムには今も物凄くお世話になりっぱなしだ。