群れなして蠢く美しき屍 15
「ん?何か、使えそうなものはねえかなって思ってさ。
おかしくなった連中に囲まれたとき、武器とかあれば何とかなるだろ?」
「あ、そっか。なら私も手伝うよ」
大好きな誠を守れる。
そう思った美樹は、すぐに誠と一緒に職員室を物色し始める。
しかし彼らはそこで予想だにしない『不気味なモノ』を発見した。
「うわっ!?な・・・何だ、これ!?」
「どうしたの河原く・・・きゃあっ!?」
「何があったの、2人とも・・・ひッ!?」
そこで3人が見たものは巨大な繭のような物体だった。
長楕円形の形は昆虫が作る繭によく似ていたが、その大きさは人間ほどもあり、繊維ではなく肉のようなもので出来ている。
全体的に赤みがかったピンク色でところどころに青黒い血管のような筋が浮かび
粘液に塗れた表面には微妙な光沢を湛えたその姿は、巨大な臓物を想わせた。
そしてそれは驚いたことにそれはゆっくりと収縮を繰り返し時折びくりと震えるのだ。
何であるのかはまったく見当がつかなかったが…どうやら生きているらしい。
だがこんな不気味なモノを作るような生き物など聞いたことがない。
そもそもこんなグロテスクな代物、いったいどこの誰が作ると・・・。
「っ!」
そこでようやく自分のおかれている立場に気づいた誠は、大あわてで振り返って周囲を見回す。
「ど・・・どうしたの、河原くん!?」
「先生っ!車のキーはもう取りましたかっ!?」
「え、ええっ。もう取ったわよ?」
「よしっ・・・!先生!狭山!急いでここから逃げるぞっ!!」
「ええっ!?ど、どーゆーことぉっ!?」
いきなりの急展開についていけない2人は、目を白黒させて誠に聞いた。
冊子の悪い2人に、誠は苛立ちをあらわに怒鳴るように説明した。
「まだわかんねえのかっ!?
今、この卵だか繭だかわからねえ代物を作ったヤツがこの学校のどこかにいるんだよっ!!」
「「・・・・・・っ!?」」
その言葉に、2人の顔色が一気に青ざめる。
そこに誠はたたみかけるように絶望の言葉を続ける。
「最悪、この職員室のどこかに隠れているかもわからねえ・・・!
そいつと鉢合わせする前に、早く逃げねえと・・・!」
この不気味な肉塊を作ったモノが、すぐ近くにいる。
それは色ボケに染まりつつあった弥生と美樹を正気に戻すのに十分なインパクトがあった。
3人は順番を争うように、職員室から出ようと走り出す・・・が。
「キャッ!?」
突然狭山が何かにすべり、転倒した。
「バカっ!こんなときに何やってんだ!?」
「ご、ゴメンなさいっ。何か変なもの踏んじゃって・・・ひッ!?」