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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 124

リオンも、私の背に腕をまわしてじっとしていた。クリス、と低く、味わうように、噛みしめるように囁く。何度も。
ときおり戯れるように、乱れた髪を指にからめては梳き流す。
「クリス」
独り言のように意味のない呟きが、今度は明確な呼びかけにかわった。
私は抱きつく腕をゆるめ、彼の肩から顔を離した。リオンは真面目くさった表情で私を見つめていた。
「今、俺ちょっと考えてたんですけど」
「何、を…?」
声がかすれて、甘ったるく響くのが自分でもわかった。
「さっき、あんたが言ったこと」
「私が…」
彼はこう続けた。
「たぶんそんなに間違ってない。あんたを見てるのは、すごく楽しい。見てて全然飽きなくて、ずっと見てたいって思う」
何を言い出すのかと首をかしげると、髪を撫でていた彼の左手が頬に触れた。
「あんたが傷つけられるのは、むかついたし」
そのまま、私の顔をなぞっていく。
「あんたに優しくされるのはいい気分だし…俺以外の奴に優しいのは、何かむかつくけど」
髪を耳にかけて背に流す。つと、めしいた人のするように指が瞼を、鼻梁をたどる。
「あんたが喜びそうなこと考えるのも、やるのも、楽しいんだ」
そう言って彼は、ほんの少しだけ間を空けた。
だが、逡巡したのはほんの一瞬だけだった。親指で唇に触れながら、彼は言った。
「だからたぶん俺、好きです。あんたのこと。大好き」

「………」
何て勝手な言い分だ。
私は思わず吹き出してしまった。
「ここで笑う?」
リオンが驚いたように顔をのぞき込んでくる。
笑った顔のまま、彼の頬に触れた。
「笑うに、決まってる…バカだな、リオン」
「バカって…ちょっと。この場面で普通そういうこと言うかな」
愛の告白してんのに、と彼は子供のように口をとがらせた。
『愛の告白』をした気でいる。
抑えきれず、くす、と笑いが漏れた。
「何で笑うんです」
「…うれしい、から、かな」
かすれ声のままささやくと、リオンが妙な顔をした。
軽く眉を寄せ、唇をゆがめた彼は、私の目には…喜びか、それとも痛みを、こらえているように見えた。
「…うれしい?ほんとに?」
ここまできて懐疑的な彼の言葉に、小さくうなずいてみせる。
「私も同じだ。…たぶん」

リオンは破顔した。
どうやら、彼が望んだ答えを返してやれたらしい。
邪気の無い、子供っぽい満面の笑みは、私にとっても思いがけないほど大きな喜びだった。

一人でいたときに夢想したような喜びとは、少々違っていることはわかっていた。
玩具扱いしていると、まるきり認めたようなものだ。

けれど彼は、私という玩具の、喜びの反応を楽しんでいる。
思うままにならない私の反応によって発生する、自分自身の感情を楽しんでいる。喜びも、痛みも、快楽も、不快さえも。

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