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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 118

 部屋の前まで来ると、そっと慎重にドアを開け、馬頭鬼が中を覗いてみると…
「…アッ! あん時のガキ!」
「ゲッ、馬面!」
 隠形鬼が用意した赤い振袖を着た紅夜叉を見て、馬頭鬼が声を上げる。
「このガキィ、あん時はよくも…」
 部屋に紅夜叉以外誰もいないことを確認すると、素早く部屋に入り、ドアの鍵をかける。
「テメェが出鱈目ぬかしたおかげで、危うく阿蘇の野郎に殺されるところだったぞっ!」
「そ、そりゃ災難だったな。あっ、あはははは……」
 笑って誤魔化そうとする紅夜叉に、怒りに満ちた顔でにじり寄る馬頭鬼。
「…フッ、だが俺も男だ。他に急いでやらなきゃいけないこともあるし、今はそんな小さな過去には拘るまい」
「おぉーー」
 余裕の笑みを浮かべ、落ち着こうとする馬頭鬼。
 しかし、すぐ全身がピクピクと震えだし。
「だぁーっ! やっぱ納まらねぇーっ!!!」
 阿蘇鬼神に追いかけられた時の恐怖と屈辱を思い出し、怒りが再びこみ上げてくる。
「フーッ、フーッ……ちょうどいい。退職金として、テメェも一緒に頂くとするか」
「へっ? 退職金って何の…うわっ!」
 ドガッシャァ!
 いきなり馬頭鬼がベッドに手をかけ、思いっきりひっくり返す。
「なっ、何しやが…」
 途中で言葉を飲み込む紅夜叉。
 ベッドの下にはボストンバッグが一つと、一振りの刀。
 そして地下へと続く階段があった……
「隠し通路?」
「あぁ、そうだ。緊急避難用のな」
「そうか……って、何で服脱いでんだよっ!」
 見れば馬頭鬼が服を脱ぎ、ボストンバッグに詰め込んでいく。
 そして、「フンッ!」と気合を入れると、人の姿から、本来の馬頭人身の鬼の姿に変わっていった。
「こいつは市の外まで続く、長い通路だからな。人間の姿で走ったら、出口まで無茶苦茶時間がかかっちまうんだよ」
 そう言いながら、何処からか持ってきたマジックで、ベッドの裏に大きくメッセージを書いていく。

『炬俐、テメェにゃ愛想が尽きた。
 金とガキと、ついでに刀は退職金に貰って行く。
 それと寝言で赤ちゃん言葉使うな。キモイんだよバーカ!』

(隠形鬼といいコイツといい、人望ゼロだな炬俐……)
「さぁ、来いっ!」
「おわっ!」
 ちょっと炬俐に同情しかけてた紅夜叉を、馬頭鬼が持ち上げ右肩に担ぐ。
 そして左手にボストンバッグと刀を持ち、口に懐中電灯を咥える。
「ひゃぁ、ひふほっ!(さぁ、行くぞっ!)」
「ちょ、ちょっと待てっ!」
 紅夜叉の叫びを無視し、馬頭鬼は階段を駆け下りて行った。
 

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