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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 116


「クリス。こいつは望んでついて来たんです」
「そんなことはわかっている!」
冷静な口調に神経を逆撫でされ、私は思わず声を荒げてしまった。
「…わかっている」
「クリス…」
後悔に、声が震える。
リオンの手が肩にかかった。
「休んでください。吐き出したっていっても、あんたもあれに飲み込まれたんだ。体調、異常はないんですか?」
「私は平気だ。お前はもう部屋に戻れ」
彼の方を見ないまま、手を振り払う。
冷静なリオンの声を、聞いているのがつらかった。

飲み込んだ集合樹を吐き出して一晩もすると、あの夢の記憶は薄れてしまっていた。
ただ、心臓を掴まれるような、個人的孤独の感触だけがかすかに、残っている。
あれが本当にレネーの意識だったのだとしたら私は、彼のそばにいなければならなかった。単なる自己満足でしかない、少年にとっては無意味なことだろうが、それでも。

後悔や責任を、他人のために負ったことなど今までになかった。それは思っていたよりずっと重苦しいものだった。

「だから…連れてくのは反対だって、言ったんだ」
リオンがぼそりとつぶやいた。
ひどく驚いた。吐き捨てるような口調だったのだ。
「そんなこと、今さら…」
「だから、今さらだって言ってるんです。こいつには確かに、あんたのために働く義務があるけど…」
リオンは、今まで聞いたことのない調子でしゃべり出した。
「だからって、そうするかどうかはこいつの勝手だ。契約に反してあんたを見捨てるのも、従って死ぬのも自由なんだ。
こいつは自分で選んで、今、こうしてる。あんたが責を負うようなことじゃない。最初からわかってたじゃないか」
「…よくそんなことが言えるな」

泣きたいような気持ちになったのは、リオンの言うことが、よく理解できたからだった。
私にとっては、レネーの行動の方がずっと不可解なのだ。
その場での最善をはかるときに、自分の安全を考慮にいれないのは、愚かなことだ。賢しいレネーがなぜそれをしないのか、理解できない。

だがリオンの口からそれを、聞きたくなかった。

「お前にはどうでもいいことなんだろう。私もレネーも、暇つぶしに眺めて関わってみただけで…楽しかったか?一人旅じゃできないこともいろいろあったな」

とても嫌な言い方だと、自分でも思った。
けれどずっと、感じていたことだった。
リオンは優しい。
出会ってこのかた、彼はずっと、私に優しかった。何度も危機を救ってくれたし、私の身を本気で案じてくれているように見えた。
だから何度も、錯覚してしまった。彼が私やレネーを、少しでも、仲間のように思っていると。親近感というのだろうか、私が彼らに感じるようになった繋がり、絆、共有の感覚を、彼も持っているのだと。
錯覚だ。
期待するたびに、そう、思い知らされる。

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