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デッドエンド
官能リレー小説 - ファンタジー系

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デッドエンド 115

「ただ、予想していたなら、教えてくれてもよかったと思っただけだ」

よそよそしい物言いになるのを、自分では止められなかった。

信頼や、信義を、求めるつもりはない。そんな関係ではないからだ。
私だって、もしリオンにそれを求められたらきっとうとましく思うだろう。話していない物事を、隠し事をしたように言われて問いつめられたりしたら、面倒くさいと、離れたいと、きっと思う。
だから、こんなことを言う気はなかった。
言わずにいようと思っていたのに。

リオンの表情が少し硬くなった気がした。
不快…なのだろう。たぶん、そうだ。
久々に見た、と頭の片隅で考えた。いやそうな顔自体は珍しくない。ただ、それが私に直に向けられたのは、もうずっと以前のことだった。

二人きりはだめだ。なぜかそう思った。
リオンの態度は変わらない。最初からずっと。
そしてたぶん私も、変わっていないのだ。

早く目覚めてくれ。
私は眠るレネーにそう、祈った。



だが、二日経ってもレネーの意識は戻らなかった。

銀行員が帰ってから二日目の夜。
一階で夕食を終えて、私とリオンは部屋に戻った。
ツインベッドの一室は、本来はリオンとレネー用だったのだが、今はリオンにシングルの部屋に移ってもらっていた。
医者が異状ないと言い切った原因不明の昏睡に、私ができることなど何もない。だが、リオンに任せて離れているのは心苦しかった。
レネーが集合樹につかまったのは、間違いなく私のためなのだ。

「レネー…」
体温がなかなか戻らない。全身が冷え切っていて、呼吸や脈拍もかなり遅い。
血管に直接注射する医療用食餌液で体を保たせてはいるが、改善する兆しはなかった。これもいつまでも続けられるものではない。意識が戻らない限りは衰弱するばかりだ。
同じ目にあった私が、何の障りもなく食事をとっているのに、この差は何なのだろう。

ベッドの脇にかけて、栗色の巻き毛を撫でる。
「…連れてくるべきじゃなかったな」
口にするつもりはなかったが、自然に言葉がこぼれていた。
「今さらですよ、そんなこと」
リオンが硬い口調でそう返す。
そう、確かに今さらだ。彼を故国から連れ出して三ヶ月半が経とうとしていた。
短いようだが、四六時中一緒にいて、ともに妙な経験を重ねてきたことを思うととても、たった数ヶ月、とは言えない。
レネーのおかげで助かったこともある。
なくてはならない旅の道連れに、少年はいつの間にかなっていた。

だが、もともとは私一人の旅だったのだ。
さして重大な目的ではない。他のだれでもいいはずの賞金首を、追うためだけの。
危険がともなうことはわかっていた。

レネーには帰る場所がある。迎えに行かなくてはならない少女がいるのだ。
彼女から離れさせるべきではなかった。
例の夢が、私に強くそう思わせた。

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