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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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幼魔鬼譚〜悪戯好きのアリス〜 113

「お主等は死体を片づけて、炬俐を出迎える準備をしておれ」
「隠形鬼様は?」
「わしはこの娘に、色々聞きたいことがあるでな」
 そう言って隠形鬼は、手足をバタつかせる紅夜叉を抱え、横道の一つの奥へ去って行った。

「はぁ…」
 河童のような緑色の肌と、短い嘴を持った鬼が、自らの掌から放出する水で床の血を洗い流しながら、ため息をつく。
「どうしただか水鬼(すいき)?」
 その様子に気づき、死体を両肩に担いでいた、身長2メートル程のスキンヘッドの大鬼が声をかける。
「いや、本当に大丈夫かと思ってな。仮にも五凶である、炬俐を暗殺などと」
「んんーー…………わがんね」
「………そうだな。お前には難しすぎる話だったな金鬼(きんき)」
「別にいいんじゃない」
 大岩に腰掛け、足をブラブラさせていた10才ぐらいの少年の鬼が代わりに答える。
「赤千穂達にホテル駄目にされた今の炬俐に、もう価値なんてないじゃん。それに……」
「それに?」
「僕も皆も、あいつ嫌いだし」
「………まぁ、確かに」
「ところでさ、水鬼」
 ニンマリと笑いながら、少年の鬼が尋ねる。
「さっきの女の子、僕達にも回してくれるかな?」
「さぁな。ところで風鬼(ふうき)」
「んっ?」
「お前も片づけ手伝えっ!」
「おわっぶっ!」
 水鬼の手から放たれた水流が、風鬼を大岩から突き落としたのであった。



 ―――平安時代、時の豪族「藤原千方(ふじわらのちかた)」は、四人の鬼を従えていた。

 どんな武器も弾き返してしまう堅い体と、怪力の持ち主の金鬼。
 強風を繰り出して敵を吹き飛ばす風鬼。
 水を操る能力を持つ水鬼。
 そして、姿と気配を完全に消し去り、敵に近付くことができる隠形鬼。

 彼らは主と共に朝廷に反乱を起こすが敗れ、その後は盗賊となり、他の鬼達を纏め上げながら、各地を転々としていた。


 同じ鬼族ということで茨木童子とも親交があったが、何故か200年前の戦には茨木、赤千穂両軍のどちらにも加担せず、中立を保っていた。


「そして最近は、部下の鬼達と共に消息不明―――ってのが、オレの知ってる四鬼の話しだ」
 隠形鬼を睨みながら、紅夜叉が自分の知っている四鬼についての知識を話す。
「フォッフォッフォッ……よく勉強しておるのう。流石は火奉」
 四鬼と言えば火奉でなくとも、鬼族の間では有名な存在である。
 炬俐が『お前も赤千穂側の妖なら名前ぐらい知っているだろ』と言ったのも頷けた。

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