憧れの女上司 1
「佐藤君、無理言って悪いんだけど、この仕事今日の午後までに片付けといてくれないかしら?」
「任してください課長!」
「悪いわね、今度何か奢るわ♪ところで鈴木君、例の○○産業との商談どうなった?」
「はい!好調です」
(はぁ…沢木課長は美人だし仕事は出来るし、素敵な女性だなぁ…)
この春に入社したばかりの新入社員、中島 幸人(22)はボンヤリとオフィスの中を眺めながら思った。彼の視線の先にいるのは沢木 直美(29)、彼の上司に当たる女性である。
高学歴のいわゆるキャリアウーマンだが、お高く留まった所は無く、仕事はバリバリこなすが気さくで部下の面倒見も良いという上司の鏡のような人物で、ゆえに彼女の率いる営業三課は士気も高い。
そんなある日、幸人がオフィスで1人で残業していると、直美が声をかけて来た。
「あら、中島君。まだ仕事してたの?」
「あ、はい。でも、もうすぐ終わりますから。」
「じゃあ、それ片付いたら、私の家に来ない?」
「え!!行ってもいいんですか?」
「ええ、いいわよ。でも変な期待しちゃだめよ。お酒を飲むだけだからね♪」
「も…もちろんです!」
…という訳で幸人は直美の家に招待された。彼女に連れられて来た所は、なかなか洒落た感じのマンションだった。幸人の安アパートとはエラい違いだ。中のインテリアも上品で洗練された物ばかりで、直美のセンスの良さをうかがわせた。
「その辺、適当に掛けてて…」
「は…はい!」
直美は物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回している幸人にそう言うと、棚の中から一本のワインのビンを出して来た。
「これよ〜♪」
ラベルを見ると、ワインには疎い幸人でも聞いた事のある有名な銘柄だった。
「す…すごいですね、課長」
「うふふ…そうでしょう?知人の伝手で手に入ったの。せっかくの名酒だもの…やっぱり飲むなら一人より二人で…どうせなら異性と飲んだ方が楽しいじゃない?」
「い…異性…!」
その言葉に幸人は激しく反応した。
「そ…そんな…!課長、駄目です!同じ職場に勤める上司と部下でなんて…!」
「中島君…君、何かスッゴい勘違いしてない?」
「…へ?あ…ああ…すいません…」
「ふふ…いいわよ。若い男の子だものね。しょうがない。許してあげるわよ」
そう言うと直美は冷蔵庫からハムやチーズなどのツマミを取り出してテーブルの上に並べた。いずれもその辺のスーパーで売ってる安物とは違って高級そうな物ばかりだ。
「うふふ…乾杯♪」
「乾杯!」
二人は向かい合ってテーブルに座り、お洒落なワイングラスにワインを注いでグラスを合わせた。高層マンションなので窓からは綺麗な夜景が見える。何とも素敵なムードだ…。
「ねえ?中島君は好きな人とかいるの?」
「いえ、全然。今は仕事の事だけでいっぱいいっぱいで・・。」
「ふ〜ん、そうなんだ。」
「逆に聞きますけど、沢木課長は好きな人いるんですか?」
「ふふ・・秘密。」
「ええ〜?そんなこと言わずに教えてくださいよ〜。」