香港国際学園 98
理人は才栄の方を向かず、エイブラムスをにらんでいる。
「剣護。久しぶりに、M1狩りとしゃれこむか!」
「よぉし、乗った。」
「ふ、2人とも、あれと戦う気!?」
才栄はエイブラムスを指差して叫ぶ。普通に考えても、狂気の沙汰だ。
「大丈夫、大丈夫!悠里さん、スタンとチャフとC4、3つずつ。」
「え?は、はい。」
理人達は悠里から注文の品を受け取ると、エイブラムスに挑みかかった。
理人は一番突出していた一台のハッチをこじ開け、スタングレネードを3つとも投げ込む。
戦車の装甲の隙間から眩い光が漏れる。
そうして、理人は見事に一台奪取に成功。
剣護の方はチャフでエイブラムスの探知装置を混乱させ、車輪にC4を取り付け爆破していく。
それに理人も加わって、奪ったエイブラムスで、残った車両を作動不能に追い込んでいった。
かかった時間は五分とかかってない。
「す、凄いや。」
あまりの凄さに声も出なかった、一同の中で才栄が最初に声をだした。
「なぁに、まだ戦車だったからましさ。傭兵時代には、アパッチ三機に追い回された事もあったよな。」
「F16にミサイル撃ち込まれたこともあった。逆に墜としたけど。」
わずか五分足らずでM1五台を撃破。
しかも、敵の死傷者は0。
この神業は理人達の傭兵時代のスキルと経験によるのが大きいだろう。
流石に負けず嫌いの藍もすぐさま退散するしか他なかった。
「誠一君達は?一緒じゃなかったの?」
「恭介を倒しに行った。俺は燵摩を倒した後に気絶してな、剣護達に起こされて、お前らが襲われたっつーから援護に来たんだ。」
才英の質問に理人は淡々と答える。
「で、話とは?」
部屋に戻り、理人は甲良、勇牙、巌、才英を机に座らした。
「今回の事件について、俺なりに推理してみたんだ。」
「推理?」
「おかしいと思わないか?主姫がいなくなれば、会長代行は恭介になる。そうすれば、ロイヤルガードが暴走するのは目に見えてたはずだ。」
「確かに。」
甲良が頷く。
「そこでだ。今回のロイヤルガードの暴走を端に発する戦闘を誰かの陰謀だと思うんだ。しかも、主姫以上の誰か、のな。」
「主姫以上なんて、この学園には・・・・」
「いや、いる。理事達だ。」
才英の言葉に巌が答える。
「そうだ。ただでさえ、主姫は学園の治安の要だぜ?それを動かせるのは、理事しかいない。」
「しかし、その推理が当たっていたとして、なぜ理事はこんな事を?」
勇牙が呻く。
「分からないけど、その事については俺と剣護で調べてみる。だから一時、俺と剣護は革命軍から抜けようと思う。」