陣陽学園〜Fight School〜 84
…体内に溜まり切った汚れを払うが如く…
「うぅ…?」
やる事やって一休み、神聖(真性)なる巨根包茎、幕辺白磁。
神聖なるモノだけに欲望(亀頭)の九割が封印されており、持続力の面では女性陣から平均以上の評価を頂いてた。
しかし射精回数は微妙、サオに栄養が行ってタマには回らなかったか。
デカくて遅発で時間辺りの発射数が少ないという、正にマスケット銃であった。
両刀で男の娘として食っていたアキと真也ならそれなり回数をこなすが白磁は精々その半分。
故にまた幸乃から『気合』が入り、白磁は尻を押さえて唸っていた。
「う〜?」
幕辺家の宗派は男色を禁じる戒律こそないが、白磁本人そうした耐性が低いらしい。
「だらぁしねぇな!あはぁ?」
ガチムチ空手小僧KAZUMAがケタケタと笑う。
日頃のフラグ乱立、女癖の悪さで窓から放り出されていたらしい彼はまだ頭から流血していた。
「鉄斎アニィだったらそんなモンじゃ済まねぇぞ?自分が男だったか女だったかわかんなくなっちゃうぜ!」
白磁はこんな軽口を叩く彼が決して悪人ではないと理解していた、馬鹿だけど。
そこへ白服の超兄貴、犬神鉄斎が優しい笑みを浮かべ語りかける。
「なぁKAZUMAよ解ってくれ?俺達はどれだけ駄目な奴でも見捨てねぇ!だからこそ厳しくする!解るな?」
「いいんです俺…鉄斎アニィみたいな不良っぽい兄貴も…好きですから…。」
とうとう男にまでフラグ立てたかコイツ。
「・・・。」
KAZUMAに惚れているらしい、HはHでも『Hentai』じゃなくて『Hell』の気配しかしない、斬多村鋭利が無言の抗議。
彼女は止まない雨の如く病む瞳を薄く閉ざす。
そして濃紺の(中2病っぽい)マントを翻すなり、鉄斎の合方にして随一の伊達男、雑賀彦一にフワリとしなだれかかる。
「どうしたんだい仔猫ちゃん?またご主人様にイジワルされたのか?」
「こくこく。」
彦一は錆び付いた甘い囁きで鋭利を軽々抱え膝に載せると、彼女の短く切り乱した蒼い髪を撫でる。
「んん〜そうか!よしよし?」
「にゃ〜ん?」
少なくとも白磁の見解で斬多村鋭利はああいうノリではない。
冗談にしか見えない絵面ではあったが、浮気症なKAZUMAを煽る行動なのだろう。
当のKAZUMAは塩の柱と化して絶望的に凍り付いていた。
「KAZUMA!お前に足りないのは度胸でも腕っ節でもデカチンでもねぇ!男っぷりさぁな?ガハハハ…!」
ダイナモ感覚で野獣な先輩、鉄斎に背を叩かれどうにかKAZUMAは硬直から立ち直る。
そして『えいり〜?』と荒野に放り出されたハムスターが如くオロオロしている所、当の鋭利から『ばーか』とトドメを刺され崩れ落ちた。
毎度お馴染みらしい、そんな愛憎劇に組一同笑いが起きる。
一応紺服同士でも先輩に当たるKAZUMAなので笑いこそ控えたが、白磁はこの暖かさを新鮮に感じていた。
隣の月星明日香が般若の笑みで『あのアバズレまた点数稼ぎか』と呟いたのは聞かなかった事にする。
白磁が寝物語でアクの強い女性陣から聞いた、そしてアキと真也が知る八霧出流の動向は、何処か統一性がない。
しかもその行動一つ一つ完結されたケースは少ない。
彼が何を成そうとしているのか、その足跡を辿ってみようと白磁達三人は考えていた。
先ずは明日の合戦で武勲を立てるが先決。
という矢先に購買の兄ちゃんが戸口で『まいだあざっすー』と軽く伝票をかざしていた。
白磁は文字通り鉛玉と黒色火薬や雷管の収まった容器、早合用の油紙その他消耗品。
今日中に明日の必要分を仕立てねばならないひと仕事だ。
真也は二連式ソウドオフショットガン(兼・棍棒)なので、紺服向け減装薬の実包を用途ごと分けるだけで済む。
アキは見た目おファンタジーな革鎧風味に仕立てた、抗弾抗刃素材ベストのサイズを確かめていた。
他の組員も品を受け取り、用がない者は好きにしている。
窓際に佇む黒服男の娘、白磁に散々カマ掘りしてくれた吹雪幸乃の表情はどこか複雑だ。
「見てんじゃねぇよ小僧、ミンチになりてぇか?」
目が合った瞬間、まさかの男声で凄まれた。