香港国際学園 58
「くそ…」
と悪態をついて血を吐き出す。
さすがに電撃はキツいらしく、内蔵にダメージかある感じだ。
だが誠一の腹に掌底を放った時にもそれなりの手応えはあった。
「勝負はまだ、これからだぜ」
誠一のバカがそうほざいて来やがった。
「俺もそう思ったところさ。」
今回は誠一が先手をとった。
手に電気を込め、突撃するも、かわされる。
「当たり前か…」後ろに回り込まれたのが分かる。
とっさに振り返るが要の姿はなかった。
「こっちだよ!」いつの間にか要は自分が振り返った正反対の方に回っていた。
紙一重、とはいかず体勢をだいぶ崩しながらも要の掌底をかわした。
だがこれでは次の攻撃に対応できない。
「ちいっ…」
慌てて障壁を造りだす。だが要は障壁を気にせず、掌底を放ってきた。「なっ?」
「喰らえ!」
要の火傷を負ったばかりの手が、再び、誠一の脇腹を捕らえた。
あまりの痛さに、誠一は意識を失った。
しかし、それも一瞬の事。意識を回復させた誠一は、次の要の攻撃をなんとか見切って避ける。
「ちぃっ!・・・」
要の舌打ち・・・要も誠一が強いことは分かっている。
ここに入学したての頃、誠一の容姿を侮り、勝負を挑み負けたことがあった。
それを機に仲良くなった2人だが、親友でありライバルと言う関係は今でも続いていた。
(また腕を上げてやがる・・・でも俺も以前の俺じゃない!)
かさに来て襲い掛かる要。しかし、誠一もそれを許すほど甘くない。
「なにっ!」
距離を詰めた要の視界から誠一が消える・・・そして、要は足に強い衝撃を受けながら、前方に弾き飛ばされていたのだ。
誠一が要の行動を読み、スライディングで足を刈ったのだ。勿論、足から電撃を浴びせてる。
自分の勢いをプラスされ、要の身体は5m程飛んでいき、地面に派手に激突した。
「凄い!・・・」
夜栄が感嘆の声を上げた。
電力だけで言えば、女の時の夜栄は遥かに上だし、筋力なんかも男の時の夜栄の方が遥かに勝っている。
確かに電撃は効かないが、誠一の戦闘能力の凄さに、今、男の時の身体能力でも誠一に勝てる気はしなかった。
「やるなっ!・・・クソガキの分際で」
言葉使いは悪いが、さっきのような毒はない。文治も要に感心していたのだ。
文治は良い物は良いと認められるだけの器量を備えていた。
そして、よろよろと起き上がった要は、息を荒げながら構えを取った。
一撃で決めるつもりの必殺の構えだ。
誠一もそれを見て目をすっと細めると、半身の姿勢で構えを取った。
2人は同時に動く。
両方とも勝負を決めに行っている事は明らかだった。
だが・・・
ゴイーンッ!!・・・
二人が交差したところでそんな鈍い音。2人の間に巨大な鉄の塊が挟まっていた。
「うっ!・・・」
「イテェ!・・・なんじゃこりゃぁ!」
2人は手を抑え、痛みに顔を顰める。
その巨大な人型の鉄の塊は、何事も無かったようにゆっくりと動く。
「この勝負、黒鉄巌が預かった!・・・御堂勇牙が会いたがってる、少し時間を取ってくれるかね?」